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投資信託の買い時は?
株価が暴落した時?

  • #資産運用
  • #投資信託

掲載日:2020年6月12日
最終更新日:2023年12月18日

2020年3月下旬より新型コロナウイルスの感染がグローバルに拡大するに伴って、人々は「ステイホーム」を余儀なくされました。ところが、実はその一方で投資の世界においては、非常にアクティブな動きが観測されています。

執筆者プロフィール
大西 洋平
出版社勤務などを経て独立し、フリーのジャーナリストとして活動。「ダイヤモンドZAi」をはじめとするマネー誌や、「週刊ダイヤモンド」、「プレジデント」、「週刊朝日」などの一般雑誌やオンラインメディアにおいて、金融・経済の分野を中心に執筆活動を続けている。

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1. 株価が暴落したときは投資を始めるチャンス!?

ニュースでも広く報道されていたように、新型コロナウイルスはグローバルに株価の暴落をもたらしました。振り返ってみると、2020年1月〜2月にかけて中国の武漢で猛威を振るっていた頃は、株式市場においてさほど目立った動きは見られていません。

しかし、2月下旬になってイタリアでも感染者が急増し始めると、株価の下落色が鮮明になっています。3月に入って米国にも一気に飛び火した後は“ショック安”の様相を呈し、ニューヨークダウ(ダウ工業株30種平均)は過去最大の下げ幅の記録を更新しました。

感染拡大を阻止するためにヒトやモノのグローバルな行き来が遮断され、経済活動が停滞していることを悲観しての現象かと思われます。ところが、こうして株価が大きく下落している最中でありながら、意外にも金融機関には株式や投資信託などの取引を行うための新規口座開設の申し込みが増えたようです。

株式や投資信託のオンライン取引を専門とする大手ネット証券では、2〜3月にかけての新規口座開設数が過去の記録を塗り替えるような規模に達したそうです。歴史的な“ショック安”と言えば2008年9月のリーマンブラザーズ破たん時(リーマンショック)を連想しがちで、当時も新規口座の開設が目立ちましたが、それを上回る勢いで急増したのです。

株式などへの投資は「安く買って高く売る」のが定石とされており、新型コロナウイルス騒動で暴落した局面こそ、その好機だと考えた人が口座開設を急いだ模様です。まだ世界的に感染拡大が続き、経済的なダメージがどの程度に及ぶのかも見当が付かない状況下でしたが、本当に投資を始めるチャンスだったと言えるのでしょうか?

2. 株式投資と投資信託の仕組みは?今って買い時なの?

先述したように、株価の急落を機に投資を始めようと考えた人が急増したわけですが、そもそも株式投資や投資信託とは、どういった仕組みになっているのでしょうか?

株式投資とは、自分が買った企業の株価が上昇した時点で売ることによって値上がり益を得るというものです。そして、どの企業を選べばいいのか(どの企業の株価が上がりそうなのか)がピンとこない人のためにプロが代わって運用するのが、株式を投資対象とする投資信託です。

投資信託とは、数多くの投資家から集めた資金を一つにまとめたうえで、金融市場の専門家が投資の判断を行うという金融商品です。分配金を受け取ったり(分配金は、実質的には元本の一部払戻しに相当する場合があります)、その運用成果を基準価額(投信の時価)の上昇による売却差益を得たりして享受できます。

一口に投資信託と言っても、株式以外にも債券やリート(不動産投資信託)など、投資対象が異なる様々なタイプがそろっています。当記事は「株価の暴落は投資のチャンスか?」というテーマに基づいているので、株式で運用している投資信託にフォーカスを当てることにします。

株式で運用する投資信託についても、特定の株価指数に基準価額の推移が連動するタイプ、目標とする株価指数を定めてそれを上回る成果をめざすタイプに大別できます。株価指数に実績がリンクしている前者に的を絞って説明を続けます。

株価指数は上昇傾向が続いたり、下降傾向が続いたりといった周期的な動きを示しています。そして、いずれかのタイミングでその方向性(トレンド)が転換するのですが、それがいつなのかは言い当てることはできません。

あくまで結果論として、「あの時点が天井(株価の最高値)だった」とか、「あの時点が大底(株価の最安値)だったから買っておけばよかった」などといったように、過去を振り返ってみて初めて判断できるものです。コロナショックによる暴落時に投資信託などを通じて株式への投資を始めた人の多くは、「100%の確信は抱けないものの、さすがに大底に近いのではないか?」と予想したのだと思われます。

3. 投資を始めるための心得

では、暴落を機に投資を始めた人たちの判断は正しかったのでしょうか?先に述べたように、それなりの時間が経過しなければ、正しかったか否かは結論づけられません。

先々でさらに株価が安値を更新するような事態も、可能性としては否定できないからです。このように投資のタイミングを正確に見計らうのは難しいものですが、実は心得次第でそういった判断は無用になります。

それは積立投資と呼ばれる手法で、毎月などといった定期的なタイミングで定額ずつ、継続的に特定の投資信託などを購入していくというものです。株価の推移にかかわらず自動引き落としで機械的に買い付けていくので、タイミングを見計らう必要がありません。

しかも、定額ずつの投入ですから、株価が安い局面では口数を多めに買い付け、高い局面では少なめに買い付けることになります。結果的に平均的な買い付け価格が平準化されていき、その効果のことを投資の世界では「ドルコスト平均法」と呼んでいます。

あくまで過去の実績で将来まで約束したものではありませんが、実際に積立投資がどれだけ有効なのかについてシミュレーションを行ってみましょう。

リーマンショックが発生する前の2008年1月5日〜2020年5月7日まで、日経平均株価に実績が連動する投資信託に毎月3万円ずつ積立投資を続けてきたと仮定すると、投資総額は447万円になります。

これに対し、2020年5月7日時点の評価額は約650万円で、コロナショックによる大暴落を経たうえでも大きな評価益が得られている計算になります。リーマンショックや東日本大震災(2011年3月)といった暴落局面でもコツコツと積立投資を続けて安く買い集め、その後に訪れた長期的な株価上昇でその成果が結実したことが奏功しているようです。

  • 手数料、信託報酬、税金などのコスト負担は計算内に含まれておりません。

このように、経験や知識に不安のある人は積立方式で少額ずつ気長に取り組むというのが投資の基本だと言えるでしょう。言い換えれば、短期的な利益を追い求めるのではなく、中長期的なスタンスで腰を据えて取り組むのが投資の本流なのです。

そして何より、投資は大きな利益を期待できる反面、損失が発生して元本割れが発生してしまう可能性もあります。したがって、先々で使い道が決まっている資金ではなく、あくまで余剰資金で取り組むほうが良いでしょう。

もちろん、投資は最終的に自分自身の判断で行うもので、どのような結果がもたらされたとしても、すべては自己責任です。そういった意味でも、初心者や経験の浅い人には、わかりやすい仕組みの投資信託が選択肢の有力候補となってきます。

4. 初心者でもお勧めの投資は?

わかりやすい仕組みの投資信託としてまず挙げられるのは、日経平均株価などといった特定の株価指数に運用実績が連動する投信(インデックスファンド)でしょう。このタイプに属する投信の中でも、信託報酬と呼ばれる手数料が割安な設定になっているものに注目したいところです。

また、こうした投資信託で資産運用を始めるなら、税制面の優遇を受けられる制度も活用したほうがいいでしょう。具体的には、つみたて投資枠やiDeCo(個人型確定拠出年金)です。

つみたて投資枠は18歳以上の日本在住者なら誰でも利用できるもので、無期限で毎年120万円まで積立投資で得られた利益にいっさい税金が課されないという制度です(本来なら20.315%の税金が徴収されます)。一方、iDeCoは用意された金融商品の中から希望のものを選んで毎月の掛金を投じていくと、60歳以降にその運用成果に応じた金額を受け取れるという制度です。

iDeCoについても、①毎月の掛金を所得から控除できる(その分だけ所得税の負担が軽くなる)、②運用中に発生した利益に税金が課されない、③受け取り時にも「公的年金等控除」や「退職金所得控除」といった税制優遇を受けられるといった特典が設けられています。なお、つみたて投資枠で利用できる投資信託は金融庁が厳しい基準を定めて特定のものに限定されています。

5. 初心者でもチャレンジしやすい株価指数連動型投信の積立投資

株価の暴落はショッキングな出来事ですが、有利に投資を始められるチャンスに結びつく可能性も秘めています。とはいえ、特に初心者にとっては、暴落している最中にチャレンジすることにはかなりの勇気が求められるものでしょう。

だからこそ、これから株や株価指数への投資を始めたいと思っている方は、わかりやすい仕組みの株価指数連動型の投資信託に積立投資を始めることが最も現実的で、ハードルの低い選択肢といえるでしょう。

これから投資を始めるなら、 東京スター銀行が取り扱っている「eMAXIS Slim」シリーズがおすすめです。「eMAXIS Slim」シリーズは、つみたて投資枠の対象となっている投資信託です。信託報酬の設定についても、極めて割安な設定になっています。

(基準日:2023年12月18日)

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