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広がるNFT(非代替性トークン)のマーケット 概要と拡大の理由とは?

  • #テクノロジー

掲載日:2022年3月4日

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1. NFT(非代替性トークン)とは

NFTは、「Non-Fungible Token」の略で、日本語にすると非代替性(ひだいたいせい)トークンです。代替できない、つまり替わりがきかないオンリーワンであることを、暗号資産(仮想通貨)の根幹的技術であるブロックチェーンを用いて証明します。

上の説明では分かりにくいので、あえて簡単に表現すると、デジタルデータの鑑定書です。画像、映像、プログラムなど全てのデジタルデータは、簡単かつ、いくらでもコピーができます。それに対して、「このデータはオリジナルですよ」というお墨付きを与えるのがNFTであると考えると、理解しやすいのではないでしょうか。

また、トークンという言葉は多岐にわたる文脈で用いられることがありますが、ここではブロックチェーン技術を利用して発行される「しるし」という意味で理解すれば問題ないでしょう。

2. NFTで変わったことは何?

2-1. デジタルデータを自分だけのものに

NFTの技術がもたらした事柄は、デジタル上で物が所有できるようになり、そしてこれまでは不可能だったデジタルデータの所有権が明確になったことです。

同じブロックチェーン技術を用いたビットコインやイーサリアムなどの暗号資産は、デジタル上で資産を保有することができる仕組みですが、NFTとは異なる部分があります。例えば、AさんとBさんがそれぞれ1ビットコインを持っている場合、その価値に差はなく同じものであり、これはつまり代替できるということを意味します。

それに対してNFTでは、Aさんが保有しているデジタルのコンテンツについて、それがオリジナルであることを証明できるようになり、Bさんが保有しているコピーとは明確に区別されます。つまり、ある個人が、あるデジタルデータ(のオリジナル)を独占できるということです。そしてそのオリジナルのデータは、唯一無二の資産価値を持つことになり、代替できないことを意味します。

2-1. NFTがもたらす新たな体験

NFTは、さまざまな分野で革命をもたらすと言われています。どのようなジャンルで、従来とは異なるどんな体験ができるようになるのでしょうか? NFTが取り入れられた代表的な分野は、下記の通りです。

ゲーム アイテムなどにNFTが付与され、それを取り引きできることから、ゲームをプレイすることによって収益を得られる可能性が生まれています。従来のゲームは遊ぶだけでしたが、レアアイテムなどを実際のお金に交換できるようになったのです。
アート アートの唯一性や所有権を証明できます。購入者は、コレクションするだけでなく、取り引きにより収益を得ることもできます。また、アーティストにとっては、出品する(収益化する)マーケットが身近な存在となります。
音楽 ミュージシャンが楽曲をNFTとして販売する動きも生まれています。従来と比較して、ミュージシャンとファンの距離感が近くなり(中間業者が不在となり)、創作を支援したり一緒に収益を得たりするという体験が生まれます。
スポーツ プロスポーツチームによるバーチャルグッズの販売、プロスポーツのゲームの連携などが生まれています。

3. NFTで活性化した市場とその理由

3-1. 高額な価値がついたNFTの例

NFTにより、デジタルデータが高い価値を生んだ例を紹介していきます。NFTの名を一躍広めたのは、2021年3月にニュースになった出来事でしょう。

NFTアートの世界では、Beepleと呼ばれるデジタルアーティストの作品が、約75億円で落札されました。Beepleは1日1作品を発表していますが、13年半の歳月をかけて制作した1作品目から5000作品目までを1枚にまとめたコラージュ作品が、従来の常識を外れたとも言える価格で落札されたのです。その落札額はニュースで伝えられました。

また、TwitterのCEOを務めるジャック・ドーシー氏による、初めてのツイートが約3億円を超える価格で落札されたニュースもあります。初ツイートされた2006年3月21日はTwitterがスタートした日であり、その初ツイートについての所有権に価値がつきました。ツイートに価値がつくというのも、NFTならではの特徴です。

この他、日本でもNFTのニュースが飛び交うようになりました。「鉄腕アトム」をモチーフにしたモザイクアートが約5600万円で落札されたり、小学生が夏休みの自由研究で描いたイラストが80万円で落札されたりと、NFTを中心とした市場は熱狂的なブームに包まれています。

なぜ、一つのデジタルデータにここまでの高値がつくのでしょうか。やはりこれは、これまで何度も述べてきた通り、従来はコピーし放題だったデジタルデータに鑑定書がつき、唯一無二の存在であることが証明できるようになったからです。これは従来の絵画にも共通する考え方で、鑑定書によって世界でたった一つのオリジナルあることが証明されるからこそ、その価値は保たれます。

また、初めてのツイートのような、これまでの仕組みでは所有権を明確にできなかったものも、NFTを利用すれば一個人のものにできるようになりました。デジタルデータを所有するということの価値観が、従来とは大きく変わっているのです。

3-2. 新技術との連携で広がる可能性

2021年10月にFacebookが社名をMetaPlatforms,Inc.(メタプラットフォーム)に変更すると発表し、話題になりました。これは同社が今後、メタバース事業に注力していく意思表明だとされています。NFTは、このメタバースとの相性も良いです。

メタバースとは、「インターネット上にある仮想三次元空間」のことを指します。アバターという仮想空間における分身を通じて、たくさんの人とコミュニケーションを取ったり、デジタルアイテムで着飾ったり、VRゴーグルを用いてあたかもその場にいるような体験をできたりするなど、世界中で注目度が急上昇している分野です。

2022年時点でメタバース分野をリードしているのは、盛んに開発されている多人数参加型のゲームです。これまでは、ゲーム内で獲得したアイテムや報酬は、そのゲーム内でしか価値を持ちませんでした。しかし、NFTの仕組みを活用することで、獲得したアイテムや報酬などを、別のゲームや現実世界に持ち出せる仕組みが広まりつつあります。

またゲーム内で流通している通貨が、投資対象である暗号資産(仮想通貨)のトークンとしてゲーム外で取り引きされたり、ゲーム内で使えるアバターやアイテムがNFTとして取り引きされたりするパターンも増えてきました。

4. まとめ

NFTの活用により、アートやゲームの世界を中心として、デジタルのデータやコンテンツに所有権が生まれる時代が訪れました。現実世界と仮想空間が交差することにより、アート、ゲーム、ビジネス、コンテンツなどの産業が活性化する期待があります。

以上

【ライター情報】
蛯沢 路彦

早稲田大学教育学部卒業。出版社勤務などを経て独立後、月刊誌「FX攻略.com」の編集長、その版元の株式会社Wa plus代表取締役を務める。退任後、マネー誌やウェブメディアにおいて、金融・経済の分野を中心に執筆活動を続ける。2020年11月、株式会社イノベクションを創業。

早稲田大学教育学部卒業。出版社勤務などを経て独立後、月刊誌「FX攻略.com」の編集長、その版元の株式会社Wa plus代表取締役を務める。退任後、マネー誌やウェブメディアにおいて、金融・経済の分野を中心に執筆活動を続ける。2020年11月、株式会社イノベクションを創業。

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