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FOMCとは?市場で与える影響や抑えておくべき経済指標まで解説

  • #株式市場・為替相場
  • #時事

掲載日:2023年5月15日

テレビを見ていると金融関連のニュースでFOMCという言葉がでますが、気になる人も多いのではないでしょうか。投資家からの注目度が非常に高く、FOMCに関連する報道によって市場が大きく動くこともしばしばあります。

それでは、このFOMCとはいったい何なのでしょうか?大まかに「米国の金利を決める会議」という認識はあるかもしれませんが、それ以上の説明はできないという方も多いのではないでしょうか。

そこで当記事では、FOMCについての基礎知識から、投資に役立てるための情報をまとめます。

この記事は5分で読めます!

1. そもそも…FOMCとは?

FOMCとは「Federal Open Market Committee」の略語で、日本語では「連邦公開市場委員会」と訳されます。日本では、日本銀行が金融政策決定会合にて政策金利を決めていますが、FOMCはこの会合の米国版に相当します。

FOMCでは、雇用の最大化と物価の安定を目標に、経済情勢を議論し政策金利を決めます。米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)の理事7名と、米国12地区の連邦準備銀行総裁12名の計19名が参加し、そのうちFRB理事7名と、ニューヨーク連銀総裁1名、それ以外の地区連銀総裁4名(1年ごとの持ち回り)の計12名が投票権を持ちます。

6週間に一度、年に8回の頻度で開催され、その内容や発表された政策金利によっては市場に大きな影響を及ぼすことがあります。

2. FOMCが日本市場へ与える影響は何?

FOMCが米国市場に影響を及ぼすのは分かりやすいですが、遠く離れた日本市場にも影響を及ぼすのはなぜでしょうか?その理由は、米国が世界最大の経済大国であり、世界経済の中心であるためです。日本市場は米国市場との連動性が高く、FOMCの結果が波及しやすい傾向があります。そのため、日本の投資家からもFOMCには高い関心が払われています。

株価に与える影響

金利と株価は、シーソーの関係でたとえられます。つまり、一方が上がれば、もう一方が下がる関係です。FOMCで金利が上がると、株価は下がる傾向があります。金利が上がると、企業はお金を借りにくくなって事業が縮小し、利益が減少するためです。

逆に金利が下がると、企業はお金を借りやすくなって事業が拡大し、利益が増加して株価は上がる傾向があります。

為替に与える影響

FOMCの結果は、為替にも影響を及ぼします。お金は、金利の低いところから、金利の高いところへ流れるのが基本です。FOMCで金利が上がると、他の通貨を売って米ドルを買う流れが起きます。日本は長らく超低金利なので、日米金利差の拡大が材料視され、円安ドル高になる傾向があります。

逆に金利が下がると、米ドルを売る流れが起きて、円高ドル安になる傾向があります。

3. FOMCが景気動向を判断するための経済指標とは

FOMCでは、さまざまな経済指標をもとに議論が行われ、金融政策が決められます。主に以下の経済指標は景気動向の判断に用いられるため、これらの経済指標発表時には市場へ影響を及ぼす傾向があります。

FF金利(フェデラル・ファンド金利)

米国の銀行間で資金を融通する際の金利です。FOMCで決定する「金利」とは、このFF金利の誘導目標のことを指します。つまり、FF金利は実質的な米国の政策金利です。

米国雇用統計

毎月の第1金曜日に発表される、米国の雇用に関する指標です。多岐にわたる項目が発表されますが、その中でも景気動向を知る上で注目すべきなのが非農業部門雇用者数と失業率、平均時給です。

これらの指標から、米国の景気が過熱していることを示す数値が発表されると、市場関係者の間ではFOMCで利上げが行われるのではないかとの思惑が広がります。利上げの観測が広がると、株安やドル高の材料となります。

消費者物価指数(CPI)

米国の物価動向を示す経済指標です。インフレ率を示し前年同月比で高い水準の数値になると、インフレ抑制のための利上げにつながりやすい傾向があります。

近年では、CPIの発表によって株価や為替で大きな値動きが起きることがあります。2022年には米国がインフレ抑制のために利上げを継続し、それがドル高円安の要因になったといわれています。

国内総生産(GDP)

GDPは、米国内で生産された財やサービスといった付加価値の総額です。速報値と改定値、確定値が発表されますが、その中でも注目されるのは速報値です。GDPが拡大していることが示されると景気が上向いていると見なされ、株高要因になります。

ISM製造業景況指数

全米供給管理協会(ISM)が公表する、製造業の景況感を表す経済指標です。製造業の購買責任者にアンケート調査を実施して算出します。0%〜100%で表され、50%を上回ると景況感がよく、50%を下回ると景況感が悪いと判断されます。

4. FOMC後にはこの3つに注目しよう

FOMCでは政策金利に注目が集まりがちですが、注目はそれだけではありません。FOMC後の声明文や記者会見、議事要旨には、相場の今後を読み解くヒントが含まれています。

1. 声明文

政策金利を決定した理由や背景、今後に向けての方向性などが述べられます。米国経済の現状をどう認識しているのか、今後どんな方向に誘導しようとしているのかが分かります。

今回のFOMCで政策金利の変更がなかったとしても、次回以降での変更が示唆されることもあり、声明文の内容によっては市場に大きな影響を与えることもあります。

2. 記者会見

声明文公表の後に、FRB議長による記者会見が開かれます。質疑応答では、声明文になかった情報が出てくることもあります。金融政策を決めるキーマンであるFRB議長の発言は、市場関係者から高い注目が集まります。

3. 議事要旨

FOMCから3週間後に公表される議事録を要約したレポートのことです。基本的に、声明文や記者会見でFOMCの内容が公表され、時間が経過して公表される議事要旨で新たな材料が出ることは多くありません。とはいえ、議論の詳細が分かるため、市場関係者から注目されます。

5. まとめ

FOMCがなぜ投資家から注目されるのか、実際にどのような影響があるのかを解説してきました。「金利が上がれば、株価は下がる」「お金は、金利の低いところから、高いところへ流れる」といった基本法則を覚えておくことで、世界経済の動きを読み取ることができます。

FOMCが開催されるのは、年に8回です。そのスケジュールを把握しておき、何が議題になるのか、どんな結論が出そうなのかといった情報にアンテナを張っておきましょう。

本文中で解説した経済指標から仮説を立て、実際にFOMCの結果と市場への影響を確認すると、それらの相関性に対する理解が深まるでしょう。

以上

【ライター情報】
蛯沢 路彦

早稲田大学教育学部卒業。出版社勤務などを経て独立後、月刊誌「FX攻略.com」の編集長、その版元の株式会社Wa plus代表取締役を務める。退任後、マネー誌やウェブメディアにおいて、金融・経済の分野を中心に執筆活動を続ける。2020年11月、株式会社イノベクションを創業。

早稲田大学教育学部卒業。出版社勤務などを経て独立後、月刊誌「FX攻略.com」の編集長、その版元の株式会社Wa plus代表取締役を務める。退任後、マネー誌やウェブメディアにおいて、金融・経済の分野を中心に執筆活動を続ける。2020年11月、株式会社イノベクションを創業。

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