定年退職後でも失業保険はもらえる?条件や方法を解説
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掲載日:2024年10月28日
定年退職時の年齢によっては、退職後でも失業保険がもらえる場合があります。ただし、公的年金の一部または全部が支給停止になる場合があるため注意が必要です。この記事では、定年退職後でも失業保険がもらえる条件や手続き方法について解説します。
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1. 定年退職したあと失業保険をもらうためには
失業保険の正式名称は「雇用保険」であり、失業した方が安定した生活を送りながら、一日でも早く就職できるよう支援することを目的とした給付を指します。「失業手当」「失業給付金」と呼ばれる場合もあります。
失業保険は、要件を満たせば定年後に受け取ることも可能です。まずは失業保険をもらうための条件について、確認しておきましょう。
1.1 もらうための条件
定年退職後に失業保険を受け取るためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 失業中で再就職の意思があること
- 退職の日以前2年間のうち、被保険者期間が12ヵ月以上あること
- 65歳未満であること
定年退職後に失業保険を受け取るためには、現在就業をしておらず失業状態であること、さらに再就職の意思があることが前提となります。
また、退職日からさかのぼって2年間のうち、雇用保険の被保険者期間(保険に加入していた期間)が通算して12ヵ月以上あることが条件です。
加えて、定年退職の日が65歳の誕生日より2日以上前であることも条件となります。これは、民法では誕生日の前日が終了するとき(午後12時)に、年を1つ取ると考えるためです。
例えば、現在64歳で4月1日生まれの方の場合、誕生日の前日である3月31日の午後12時に満65歳になるため、3月30日以前に定年退職をしている必要があります。
2. 失業保険はいくらぐらいもらえる?
失業保険の受給額は、「基本手当日額×所定給付日数」で計算します。まずは基本手当日額と給付日数の仕組みを理解して、失業保険がいくらもらえるのか、具体的な受給額を計算してみましょう。
2.1 基本手当日額とは?
基本手当日額とは、失業している日に受給できる1日あたりの金額のことです。基本手当日額は、以下の計算式で計算します。
基本手当日額={(離職以前6ヵ月の賃金の合計)÷180}×給付率(50~80%)
※60~64歳の方は45~80%
給付率は賃金が低い方ほど、高い給付率が適用されます。また、基本手当日額には下限と上限があり、令和6年8月時点における下限は2,196円、上限は年齢によって異なり6,945~7,294円です。
2.2 失業保険の給付日数
失業保険がもらえる期間のことを所定給付日数と言います。所定給付日数は、離職理由や年齢、被保険者期間によって異なります。
【定年・契約期間満了・自己都合退職の場合】
被保険者期間 | |||
---|---|---|---|
10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | |
離職時の満年齢65歳未満 | 90日 | 120日 | 150日 |
【特定受給資格者・一部の特定理由離職者など】
特定受給資格者とは、倒産や解雇などの理由で再就職の準備をすることができず、離職を余儀なくされた方のことです。特定理由離職者とは、労働の契約期間が満了して更新されなかった場合や、その他やむを得ない理由で離職した方を指します。
被保険者期間 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | ||
離職時の満年齢 | 30歳未満 | 90日 | 90日 | 180日 | 180日 | − |
30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 | |
45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
2.3 失業保険の計算方法
基本手当日額と所定給付日数が分かれば、自身で失業保険の受給額を計算できます。例として月給30万円、11年勤務をした33歳会社員が、倒産で離職したときの失業保険の受給額を計算してみましょう。
※給付率は50%とします。
{(30万円×6ヵ月)÷180}×給付率50%=5,000円・・・基本手当日額は5,000円
失業手当の受給額合計=5,000円×210日(会社の倒産による離職のため)=105万円
なお、離職理由が解雇・定年・契約期間満了の場合は、離職票を提出し、求職申し込みをしてから7日間の待機期間が経過すると支給が開始されます。一方、離職理由が自己都合・懲戒解雇の場合は、7日間の待機期間に加え、2~3ヵ月の給付制限期間が経過したあとに支給開始となります。
3. 失業保険を受け取るための手続き
失業保険を受給するときの必要書類と、手続きの流れを紹介します。
【必要書類】
- 離職票−1
- 離職票−2
- マイナンバーカード
- 6ヵ月以内の写真
- 本人名義の預金通帳
離職票−1と−2は、ハローワークが発行しますが、お勤めの方は会社を通じて受け取ります。離職票の発行は会社の義務ではないため、必要なときは忘れずに申し出るようにしてください。
マイナンバーカードを持っていない場合は、個人番号確認書類と身元(実在)確認書類が必要です。
<個人番号確認書類となるもの(以下のうちいずれか1点)>
通知カード
個人番号の記載のある住民票(住民票記載事項証明書)
<身元確認書類(以下のいずれかの方法)>
運転免許証・運転経歴証明書・官公署が発行した身分証明書・資格証明書(写真付き)などのうち、いずれか1つ
公的医療保険の被保険者証、児童扶養手当証書のうち異なる2種類(コピー不可)
【手続きの流れ】
- 離職後に求職申込と受給資格の決定
- 雇用保険説明会
- 待機満了
- 失業認定
- 基本手当の支払い
- 4週間ごとの認定日に失業認定を受ける
離職後、受給手続きをする本人がハローワークに必要書類を持っていきます。そして、提出した資料をもとにハローワークが受給資格の確認・決定をします。その後、指定の日時に開催される雇用保険説明会を受講し、雇用保険の受給について重要な事項の説明を受けましょう。受給資格者証や失業認定申告書など、必要な書類もこの時点で受け取れます。
受給資格の決定を受けると、7日の待機期間を経たあと(理由によってはさらに2~3ヵ月の給付制限期間経過後)に失業の認定が行われ、失業保険がもらえるようになります。
失業の認定とは、失業状態にあることを確認する手続きのことです。継続的に失業保険をもらうには、原則として4週間に1度、管轄のハローワークに出向き、就業の有無や求職活動の実績などを報告する必要があります。
4. 65歳以上で定年退職した場合
近年では定年退職後も働きたいと考える方も増えていますが、満65歳以上で離職した場合、失業保険はもらえません。ただし、満65歳以上で離職した方でも、安心して求職活動を行える環境が整っています。
4.1 高年齢求職者給付金が受け取れる?
満65歳以上の方が離職した場合、失業保険の代わりに高年齢求職者給付金が受け取れます。
雇用保険の加入期間が1年以上の場合は「基本手当日額の50日分」、加入期間が1年未満の場合は「基本手当日額の30日分」の高年齢求職者給付金が一括で支給されます。また、高年齢求職者給付金は、年金と併給することも可能です。
4.2 雇用保険の新規加入が可能
平成29年1月1日以降、65歳以上の方も高年齢被保険者として、雇用保険に加入できるようになりました。
そのため、65歳以降の方でも一般の雇用保険の被保険者と同じように、育児・介護休業給付や教育訓練給付などを利用できるようになっています。家族の介護が必要になったときや、リスキリングが必要なときに大きな支えとなるでしょう。
5. 定年退職後に失業保険を受け取るメリット
老後、公的年金だけでは生活が難しいと言われています。働いて収入を増やそうとしても、次の就職先がすぐに見つからなければ、その間に貯蓄が減ってしまいます。しかし、定年退職後も失業保険を受け取ることができれば、時間に余裕を持って自身にあった職場を探せるでしょう。
満65歳以上の方が受け取れる高年齢求職者給付金は一時金ですが、公的年金と併給が可能です。また、要件を満たしていれば、何度でも受給可能です。
6. 定年退職後に失業保険を受け取る際の注意点
高年齢求職者給付金は年金と併給できますが、失業保険を受給している間は老齢厚生年金を受給できません。求職の申し込みをした時点で、老齢年金の一部または全部が支給停止となるため注意が必要です。
また、失業保険を受給できる期間は「離職した翌日から1年間」です。この期間が過ぎると、給付日数が残っていても支給されません。定年退職後は少しゆっくりしたい気持ちがあるかもしれませんが、失業保険の手続きは早めに済ませましょう。
7. まとめ
定年退職後も「まだ働ける」「公的年金だけでは老後の生活が不安」などの理由から、引き続き働きたいと考えている方もいるでしょう。
定年退職後は65歳未満であれば、失業保険が受け取れるので安心して求職活動ができます。さらに要件を満たせば、65歳以降も雇用保険にも加入できるため、家族の介護が必要なときや、リスキリングをするときなどに役立ちます。
老後の生活に不安がある方は、資産運用も検討してみましょう。資産運用は元本割れリスクを伴いますが、貯蓄よりも効率的に資産を増やせる可能性があります。
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