トレンド

【2024年版】年末調整とは?確定申告との違いや必要書類の書き方を解説

  • #税金

掲載日:2024年12月16日

年末が近くなると、社内で年末調整という言葉を聞く機会が増えるでしょう。年末調整は、納税に関する重要な手続きであり、対象となる人は毎年必ず行わなければなりません。しかし、年末調整とは具体的にどのようなものなのか理解していない人もいるでしょう。

この記事では、年末調整の仕組みや確定申告との違い、書類の書き方を解説します。また、年末調整で受けられる控除や、年末調整を怠った場合にどうなるのかについても解説するため、年末調整について理解を深めたい人は参考にしてください。

この記事は7分で読めます!

1. 年末調整とは?

年末調整とは、毎月の給料から天引きされている所得税を再計算し、納税額を調整する制度のことです。会社員の場合は、給与から天引きされている所得税は、本人に代わって勤務している会社が納めています。

しかし、毎月天引きされている所得税は、概算で算出された税額であり、正しい税額ではありません。そのため、勤務している会社は、従業員の1年間の給与が確定した時点で正しい所得税の税額を計算して納める必要があります。この際に、正しい税額よりも多く納めている場合は納税者に還付し、正しい税額よりも不足している場合は追加で納めるという手続きが年末調整です。

年末調整を行う際には、「扶養控除等申告書」や「基礎控除申告書」などさまざまな書類を勤務先に提出する必要があります。なお、2024年は定額減税(所得税の特別控除)が実施されており、年末調整を行う場合は定額減税の額も考慮されます。

1.1 確定申告との違い

確定申告も、年末調整と同様に所得税に関する手続きです。それぞれの違いは、年末調整が「所得税の過不足分を算出するために納税者の勤務先の会社が行う手続き」であるのに対し、確定申告は「所得税の額を確定するために納税者が行う手続き」であるという点です。

「個人事業主」と「副業所得が20万円を超える会社員」は、確定申告の対象となります。確定申告の対象者は、前年の1月1日~12月31日までの所得を基に、納めなければならない所得税を自身で算出します。このように、算出した所得や所得税の額を税務署に申告して、所得税を納税するまでの手続きが確定申告です。なお、確定申告では、2月16日から3月15日までに納税まで済ませる必要があります。

2. 年末調整を行う時期と対象者

年末調整は、おおむね10月下旬~11月頃にスタートし、1月下旬までに手続きをするのが一般的です。具体的には、10月下旬頃に勤務先の会社より各種必要な書類が従業員に配布されます。従業員は11月上旬頃までに必要事項を記入して勤務先の会社に提出するという流れです。その年の1月1日~12月31日までの給与が年末調整の対象となります。

そのため会社は、その年の最後の給与が支払われる12月に年末調整を行い、所得税額に過不足があれば12月か翌年1月の給与で還付あるいは追加徴収をします。

年末調整の対象者となるのは、原則として「扶養控除等申告書」を勤務先の会社に提出している人です。扶養控除等申告書とは、扶養控除を申告するために必要な書類であり、申告すれば年間の合計所得から一定額を差し引かれ、所得税と住民税を抑えることができます。

ただし、年間の合計所得が2,000万円を超えているといった一定の条件を満たしている人は、扶養控除等申告書を提出しても年末調整の対象とはなりません。

3. 年末調整で必要な書類とは

年末調整では、以下のような書類が必要となります。

  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  • 給与所得者の基礎控除 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
  • 給与所得者の保険料控除申告書
  • 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 兼 (特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書

上記のうち、「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 兼 (特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書」以外の書類は、勤務先の会社から配布されます。

なお、2024年6月から定額減税が実施されましたが、会社員は特に手続きをしなくても2024年6月1日以降、最初に支払われる給与や賞与から定額減税の控除額が差し引かれています。一度で引ききれない分は、7月以降の給与や賞与で控除され、それでも控除しきれなければ年末控除で控除される仕組みです。

また従業員のなかで、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書に記載していない扶養親族がいるときは、2024年6月1日以降の最初の給与までに「源泉徴収に係る定額減税のための申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書」を勤務先に提出します。

3.1 必要書類の書き方

必要書類の書き方は以下の通りです。

  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
    主に扶養控除や、1人親控除を受けるための書類です。書類の上部の氏名、住所、生年月日、配偶者の有無を記入し、扶養控除を受けるときはAとB欄、1人親控除を受けるときはC欄に記載します。扶養親族がいないときは空欄のまま提出します。
  • 給与所得者の基礎控除 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
    基礎控除と配偶者控除、配偶者特別控除を受けるための書類です。基礎控除はすべての納税者が対象のため配偶者がいなくても提出が必要です。まずは書類の上部にある氏名と住所を記入しましょう。

なお令和6年は、定額減税に伴い、「令和6年分給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼年末調整に係る定額減税のための申告書兼所得金額調整控除申告書」になっています。そのため、本人の令和6年度の合計所得金額の見積額が1,805万以下で、配偶者は令和6年の合計所得金額の見積額が48万以下のときに「定額減税対象の欄」にチェックを入れます。

  • 給与所得者の保険料控除申告書
    生命保険料控除や地震保険料控除、iDeCoの掛金で所得控除を受けるときなどに使用します。保険会社や国民年金基金連合会から控除証明書が送られてくる書類を基に必要事項を記入し、控除証明書と一緒に提出します。
  • 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 兼(特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書
    住宅ローン控除を受ける場合、初年度は確定申告が必要ですが、2年目以降は「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 兼(特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書」が対象者に配布されます。

書類上部にある、氏名住所欄に記入をして、借入金残高と控除額を自身で記入していきます。提出するときは、「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」も添付します。

4. 年末調整で受けることができる控除

生命保険料控除、地震保険料控除、iDeCoは年末調整をしなければ控除が受けられません。年末調整の時期が近くなると、生命保険料控除の場合は保険会社、地震保険料控除は損害保険会社、iDeCoは国民年金基金連合会から控除証明が届きます。

生命保険料控除は一般生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除の3種類に分かれ、それぞれ最大4万円の控除が受けられます。また、この3つの控除は併用することができ、最大12万円まで控除が受けられます。

【生命保険料控除の所得控除限度額】
2012年1月1日以降に締結した保険契約など
生命保険料控除の所得控除限度額
所得税 住民税
全体の所得控除限度額 12万円 7万円
一般生命保険料控除限度額 4万円 2.8万円
個人年金保険料控除限度額 4万円 2.8万円
介護医療保険料控除限度額 4万円 2.8万円
※住民税の所得控除限度額はそれぞれ2.8万円ですが、合計した場合は7万円が限度額となります。

地震保険料控除は最大5万円、iDeCoは年間掛金全額が所得控除の対象です。

4.1 確定申告しないと受けられない控除

はじめて住宅ローン控除を受ける場合は、確定申告が必要です。

また医療費控除を受けるときも忘れずに確定申告をしましょう。医療費控除とは、税金を納める本人と生計を一つにする親族が支払った医療費が一定額を超えたとき、受けられる所得控除です。

受けられる控除額は以下の計算式で計算します。
医療費控除額=実際に支払った医療費の合計額−保険金などで補填された金額―(10万円または所得合計金額の5%いずれか少ない方)

5. 年末調整をしないとどうなる?

年末調整は、正しい所得税の税額を支払うために、対象者は、毎年行わなければなりません。しかし、忘れてしまったなどで年末調整をしていない場合、どうなるのでしょうか。ここでは、年末調整を従業員がしなかった場合と会社がしなかった場合にどうなるのかについて解説します。

5.1 従業員がしなかった場合

年末調整は、基本的に勤務先の会社が手続きを行いますが、必要な書類を従業員が提出しなかった場合、年末調整が適切に行われない可能性もあるでしょう。年末調整が適切に行われていなければ、所得税の不足があった際に延滞税が加算されたり、払い過ぎた還付金が受け取れなかったりする可能性があります。

年末調整に必要な書類の提出を忘れてしまった場合は、従業員自身で確定申告を行うことで、所得税の過不足分を清算することが可能です。期間内に年末調整だけでなく確定申告をするのも忘れてしまった場合は、還付申告ができます。なお、還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間は提出可能です。

5.2 会社がしなかった場合

年末調整の対象者が勤務している会社は、年末調整を行う義務があります。故意に年末調整を怠ると脱税に該当する可能性もあり、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が課せられます。

6. まとめ

年末調整とは、その年の正しい所得税額を算出して、給与所得者が月々給与から天引きされている所得税の過不足を調整することです。年末調整が必要な時期になると、会社から書類が配布されるため、必要事項を記入しましょう。

生命保険料控除や地震保険料控除、iDeCo(小規模共済等掛金控除)などは、年末調整で申告を忘れると控除が受けられず、所得税の軽減が受けられなくなってしまいます。

必要以上に所得税を負担することがないよう、年末控除の流れや仕組みを理解しておきましょう。

  • 本記事に記載された情報は、掲載日時点のものです。
    お問い合わせ先などの情報や掲載内容は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。
  • 当行は、細心の注意を払って情報を掲載しておりますが、記事内容の正確性、信頼性、最新情報等であることに関して保証するものではございません。

関連記事