トレンド

利上げとは?株価や物価など生活に与える影響とアメリカの利上げについてわかりやすく解説!

  • #時事
  • #経済

掲載日:2024年12月16日

2024年3月、日本銀行はマイナス金利政策を解除し、2007年以来17年ぶりの利上げに踏み切りました。さらに4ヶ月後の2024年7月、政策金利を再び引き上げ、金融引き締め策を強化しました。こうした利上げは、自身の生活にどのような影響があるのか、不安に感じる人もいるのではないでしょうか。

この記事では、利上げが株価や物価など私たちの生活の身近なところでどのような影響を与えるのか解説します。家計のためにできる対策についても解説するため、利上げに対応できるように参考にしてください。

この記事は6分で読めます!

1. 利上げとは?

利上げとは各国の中央銀行が政策金利を引き上げることをいいます。中央銀行が利上げをする理由は、主に景気の上昇に伴うインフレを抑制するためです。

インフレとはインフレーションの略語で、モノの価値が上がり、お金の価値が相対的に下がってしまうことです。たとえば、1つ100円で購入できていた商品が、翌年には110円になるというケースがインフレです。

利上げをするとなぜインフレが抑制できるのかについては、後述します。

2. 利上げが与える生活への影響

日本の中央銀行である日本銀行(以降、日銀)は、2024年3月金融政策決定会合で、17年ぶりの利上げを行いました。同年7月にはさらに0.25%、政策金利を引き上げています。
自国の中央銀行が利上げをすると、生活にどのような影響があるのでしょうか。ここでは、株価、物価、住宅ローン、為替への影響に分けて解説します。

2.1 株価への影響

利上げをすると、銀行が企業に貸し出すときの金利も上昇します。企業は銀行から融資を受けるとこれまで以上に利息の負担が増えるため、利益が少なくなります。また、金利が高いため、今後銀行から融資を受けるのは控えようと考えるでしょう。これにより、企業の設備投資や事業拡大が抑制されるため、一般的に株価が下落します。

ただし、銀行や保険会社などの一部は、政策金利が上昇すると株価がアップするケースもあります。銀行の株価がアップするのは、利上げによってこれまでより高い金利で企業に融資ができるようになり、利益が増えるためです。

また、保険会社は、契約者から預かった保険料をどれくらいの利回りで運用できるかを予測して保険料を設定しています。この利回りのことを予定利率といい、同じ保障金額の場合は予定利率が高いほど保険料が安くなり、予定利率が低いほど保険料は高くなります。利上げがあると予定利率が高くなりやすいため、生命保険の保険料が下がり、商品が売れると考えられることから、生命保険会社の株価は上がるのです。

さらに金利が上がると、預貯金や債券などの利回りが高くなり、リスクが高い株式投資よりも比較的リスクが低い預貯金や債券に注目が集まる点も、株価が下落する要因といえるでしょう。

2.2 物価への影響

利上げをすると物価が下落します。物価が決まる要因の1つは、商品に対する需要と供給の相互作用です。たとえば、ある商品の需要が供給よりも高い状態にあれば、物価は高騰するでしょう。一方で商品の需要が供給を下回ると、物価も低下します。

利上げによって銀行の金利が高くなると、企業や個人は資金を借りづらくなります。企業や個人は、銀行からの資金を控えるようになり、商品の購入意欲も低下するでしょう。これによって、商品の需要が供給を下回るようになるため、物価が下がるという仕組みです。

2.3 住宅ローンへの影響

日本の住宅ローンは大きく固定金利と変動金利に分けられます。固定金利は10年国債の利回りの影響を受けます。そのため、日銀が利上げをすると10年国債の利回りが上昇し、固定金利の住宅ローンの金利がアップします。ただし、固定金利は返済期間中に金利が変わることはないため、主に影響を受けるのは、これから固定金利を利用しようとしている人です。

一方、変動金利は、一般的に短期プライムレートに連動する形で金利が見直されます。短期プライムレートとは、金融機関が企業に短期で貸し出すときの基準金利のことです。日銀の利上げに伴い、短期プライムレートを引き上げる金融機関が増えており、変動金利も上昇傾向にあります。

変動金利は返済期間中も金利が見直されるため、利用している金融機関によっては、返済額が増えてしまう可能性もあるでしょう。

2.4 為替への影響

利上げをして多国間との金利差が変わると、為替に影響を与えます。たとえば、アメリカと日本の金利差が5.0%で、日本だけが利上げをして金利差が縮まると、円高ドル安になる傾向があります。

円高は、商品や原材料を輸入している企業にとってはメリットです。たとえば、毎月原材料を10万ドル分仕入れている企業の場合、1ドル150円のときは1,500万円の支払いが必要ですが、円高で1ドル140円になると支払額は1,400万円で済みます。このように仕入れコストが下がることで、利益率の向上が期待できます。

3. 利上げとインフレの関係性

各国の中央銀行が利上げを行うのは、過熱傾向にある景気の抑制や物価の安定化を図るためです。新型コロナ禍では、感染拡大を防ぐため経済活動が抑制され、多くの国が金利を下げて景気回復の後押しをしました。しかし、その後の経済活動の正常化に伴って雇用や需要が急回復し、人手不足、モノ不足から急激なインフレに直面したことにより、各国の中央銀行は急ピッチで利上げを行いました。

政策金利を引き上げることで、銀行が企業に貸し出す金利が上がるため、企業の経済活動が抑制され、景気過熱が収まります。実際、米国やEUでは、景気過熱や物価上昇が比較的落ち着きを見せ、今では利下げを行う局面をむかえています。

利上げがあると、住宅ローンやマイカーローンなどの金利がアップして利用しにくくなるなどネガティブな点に目がいきがちですが、最終的にはインフレを抑制する効果が期待できるため、長期的な視点で効果を見ていくことが大切です。

4. 米国の利上げ影響

アメリカの中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)は、景気の過熱やインフレの加速を抑制するため、利上げによって調整してきました。それによって、インターネットバブルや住宅バブルによる資産価格の過度な上昇を抑制し、景気の安定を図ってきました。

しかし、日本は金融緩和政策を維持していたため日米の金利差が拡大し、急激に円安ドル高が進みました。米国の利上げによる円安ドル高がもたらした主な影響は以下の通りです。

  • 海外旅行の費用が高くなった
  • 多くの飲食店が値上げをした
  • 日用品が値上がりした

このように日本に住んでいるからといって、他国の利上げが無関係というわけではありません。日本だけでなく、主要国の金利なども私たちの生活に影響を与えるということを理解しておきましょう。

5. 家計のためにできる対策

これまで日本は金融緩和を続けてきたため、ローンの金利や物価が上昇する可能性は少ないと思っていた人も多いでしょう。

しかし、2023年の物価上昇率は前年比で+ 3.1%と41年ぶりの水準となったり、17年ぶりの利上げを行ったりするなど大きな変化が見られます。もはや従来のような節約だけでは、対処できないかもしれません。

こうした大きな環境変化に耐えられるよう、家計のためにできる対策を立てておきましょう。ここではおすすめの対策として2つ紹介します。

  • 円以外の資産を保有する
    インフレの局面では、金利が低い銀行預金や保険などの資産価値が目減りしてしまいます。しかし、米ドルやユーロなど金利が高い国の資産も取り入れることで、自身の資産をインフレから守ることができます。
  • 資産運用をする
    投資信託など資産を増やす運用も取り入れてみましょう。元本割れリスクもありますが、インフレ率を上回るリターンが期待できます。運用益に税金がかからないNISA、所得控除や受取時のメリットがあるiDeCoを活用することでさらに効率的に資産運用ができるでしょう。

東京スター銀行では、お客さまのさまざまなニーズにお応えする商品・サービスをご用意しております。詳しくは、以下よりご確認ください。

6. まとめ

利上げをすると、特定の業種の株価が下落したり、住宅ローンの金利がアップしたりするなどの影響があります。こうした影響は、将来的に物価が低下したり、海外旅行の旅行代が安くなったりするなどのメリットがあります。

昨今の日本は、利上げ傾向にありますが、世界情勢次第では、利下げに転じる可能性もないとはいえません。

目まぐるしい環境変化から自身の資産を守るために、日本の景気や金利政策だけでなく海外情勢や金融商品に目を向けることが大切です。

  • 本記事に記載された情報は、掲載日時点のものです。
    お問い合わせ先などの情報や掲載内容は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。
  • 当行は、細心の注意を払って情報を掲載しておりますが、記事内容の正確性、信頼性、最新情報等であることに関して保証するものではございません。

関連記事