FRBとは?仕組みと役割、日本への影響を解説!
- #経済
掲載日:2025年1月29日

FRBは米国の金融政策の策定をする理事会のことです。FRBが実施する金融政策は、米国だけでなく日本や世界各国にも影響を及ぼします。そのため、FRBがどのような組織でどのような役割があるのか気になる人もいるでしょう。
この記事ではFRBとはどのような組織なのか、仕組みや役割などをわかりやすく解説します。またFRBの金融政策が日本に与える影響についても紹介するため、参考にしてください。
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1. FRBとは
FRBとは「The Federal Reserve Board」の頭文字をとった略称で、日本語では「連邦準備制度理事会」と訳します。FRBは米国の中央銀行にあたる組織で、日本でいうところの日本銀行(日銀)と同様の役割を持つ最高意思決定機関です。まずはFRBの仕組みと役割について解説します。
1.1 FRBの仕組みと役割
FRBの役割は、全米12地区の連邦準備銀行の統括と「雇用の最大化」「物価の安定」を目指してさまざまな金融政策を駆使することです。
FRBは14年任期の理事7名で構成され、理事のなかから議長と副議長が任命されます。議長と副議長の任期は4年です。FRBのワシントン本部にいる7人の理事は大統領が指名し、上院が承認します。議長は世界の基軸通貨であるドルの番人ともいわれています。
なおFRBは理事会であり銀行ではありません。実際はFRBの監督のもと全米12地区に置かれた連邦準備銀行が中央銀行業務を行い、米国の金融政策を実施します。
各地区の連邦準備銀行は地区連銀とも呼ばれ、地方分権の意識が色濃く反映されている仕組みとなっています。日本のように日銀が政策決定から実施まですべて担うわけではないという点が特徴です。
1.2 FRBとFEDの違いについて
FEDとは連邦準備制度「Federal Reserve System」の略で、頭文字をとってFRSと呼ばれることもあります。FEDは米国の中央銀行の制度を指し、そのなかで実際に意思決定をしている組織がFRBという関係にあります。
2. FRBのFOMCについて
FOMCとは「Federal Open Market Committee」の頭文字をとったもので、日本語に訳すと「連邦公開市場委員会」です。FOMCはFRBの金融政策を具体的に決定する組織で、年8回開催されます。FOMCには、FRBの理事7名とニューヨーク連邦準備銀行総裁1名に加えて、各地区にある連邦準備銀行総裁のなかから選ばれた4名の12名が参加し、政策金利、景況判断、今後の政策方針などを話し合います。
FOMCの金融政策は世界の市場に影響を与えます。代表的な影響として以下の2つがあります。
利上げと利下げ
FRBは経済や物価、雇用などを調整する目的で利上げや利下げを行うことがあります。利上げや利下げは、世界の市場に大きな影響を与えるでしょう。
たとえば、景気の低迷によりFRBが利下げを行うと、各企業や個人は金融機関から低い金利でお金を借りることが可能です。安い金利でお金を借りられる企業は、設備投資の拡大といった事業活動を積極的に行えるようになります。また個人もお金を借りて消費したり投資したりすることが可能です。その結果、市場全体の景気の回復が見込めます。
一方で景気が過熱してインフレになると、FRBは利上げを行います。金利が上昇すると、企業や個人は資金調達コストがアップするためお金の借り入れを控えるでしょう。その結果、企業の設備投資は控えられ、個人の購入意欲の低下などが起こり景気も下がります。
QEとQT
QEとは「Quantitative Easing」の略で「量的緩和」のことです。中央銀行が国債や手形を買い入れて市場の資金量を増やし、金融市場の安定や景気の回復を目指します。
一方のQTとは「Quantitative Tightening」の略で「量的引き締め」のことです。国債といった中央銀行が保有する資産を売却したり、満期を迎えた債券の再投資を停止したりします。その結果、景気の過熱やインフレを抑制することが可能です。
3. FRBによる金融政策例
これまでFRBは「リーマンショック」「チャイナショック」「コロナショック」などに対して金融政策を実施しました。それぞれについて詳しく解説します。
リーマンショック
2008年9月に発生した米国の大手投資銀行リーマン・ブラザーズの経営破綻により、世界的金融危機をもたらしました。
この危機に対応するためにFRBは2008年12月より、政策金利をゼロ近く(誘導目標0〜0.25%)まで引き下げています。さらに3回に渡ってQEを行うことでリーマンショック危機後、一時10%まで悪化した失業率が、2015年11月には5.0%と危機前の水準に回復しました。
2015月12月にようやく政策金利を0.25%引き上げ、9年半ぶりに金利正常化への一歩を踏み出しました。
チャイナショック
2015年、過剰設備や過剰債務から中国の株価と人民元が暴落し、世界の株式市場にも影響を与え、株安の連鎖をもたらしました。
リーマンショックの影響で引き下げられた政策金利は、当初2015年9月に引き上げに踏み切るとの観測がありました。しかしチャイナショックが起こり、市場の動揺が生じたことから利上げは2015年12月に先送りにし、低金利施策の維持を決定しました。
これにより、投資家たちは金融緩和環境が継続することに期待し、リスクを回避する動きは落ち着きを取り戻しました。
コロナショック
新型コロナウイルスの感染拡大を受けた2020年2月24日以降に起きた金融市場の混乱のことです。リーマンショック以降、徐々に景気は回復し正常化しましたが、新型コロナウイルスにより経済が停滞しました。
FRBは2020年3月3日に臨時のFOMCを開催し、0.5%の緊急利下げに踏み切り、さらに15日に1.0%の大幅利下げを決めました。その後、新型コロナ禍からの正常化により景気が回復局面に向かい、2022年3月のFOMCで3年3ヵ月ぶりに政策金利の引き上げを決定します。
しかし新型コロナ禍からの正常化によりFRBが金利の引き上げを始めると、今度は景気の急回復により人手と原材料が不足し、予想外の物価高騰が起こりました。これに対応するためにFRBは、2022年3月から2023年7月にかけて計11回の利上げを行い、政策金利を5.25〜5.5%まで引き上げました。
利上げにより物価上昇率が着実に低下し、労働市場の弱さを示す経済指標が増えたことを機に、FRBは2024年9月のFOMCで0.5%の利下げを決定しました。
4. 金融政策が与える日本への影響とは
日本は1990年にバブル経済が崩壊して以降、長期に渡りデフレが続いており、日銀は物価上昇率の目標を掲げ、粘り強いマイナス金利政策を続けていました。マイナス金利とは、政策金利を0%よりも低い水準にする政策のことです。
一方、米国では新型コロナ後、急速に利上げを続けたため、日米の金利差は広がっていきました。
日米の金利差が拡大すると、円安ドル高になる傾向があります。円安ドル高とは、日本円の価値が外国の通貨に対して安くなる状態のことです。たとえば、1ドルあたり100円から1ドルあたり105円になったら円安ドル高の状態となります。
円安ドル高になると輸入品の価格が上昇します。輸入している食材を使用している飲食店や、原料を輸入している製造業などはコストが上昇することから、価格に転嫁しなければ赤字になってしまうでしょう。
また日本はエネルギーの輸入依存度が高い国のため、円安はエネルギー価格の上昇にもつながります。こうした状況から、日本も2022年10月に40年ぶりの水準となる物価上昇局面を迎え、日銀は2024年3月にマイナス金利を解除、7月には0.25%金利を引き上げました。
その後米国では2024年9月と11月に利下げを行いました。これにより日米の金利差が縮小するため、円安ドル高を改善できる可能性があるでしょう。
5. まとめ
FRBとは全米12地区の連邦準備銀行の統括と雇用の最大化や物価の安定のために、さまざまな金融政策を駆使する連邦準備制度理事会のことです。FRBは、世界の景気に合わせて中央銀行の利上げ・利下げやQE・QTなどの金融政策を決定して実施します。
FRBは2008年のリーマンショックや2020年以降のコロナショックなどに対応するために、その時期に利下げやQEなどの金融政策を行いました。また、FRBによる金融政策は米国だけでなく円安ドル高といった日本にも影響を与えます。FRBの仕組みや日本への影響を理解したうえで、FRBの今後の動きについて注目してみてはいかがでしょうか。
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