利下げをわかりやすく!日々の生活への影響と米国の利下げについても解説
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掲載日:2025年6月2日

景気が停滞気味の際、中央銀行が取る代表的な金融政策のひとつが「利下げ」です。借入の負担を軽くし、経済を活性化させることが目的ですが、預貯金の利息が下がるなどの影響もあります。
本記事では、利下げの概要から生活への影響、米国の金融政策が為替や日本経済に及ぼす効果を解説します。
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1. 利下げとは?
利下げとは、各国の中央銀行が政策金利を引き下げることを指します。政策金利は、中央銀行が金融政策の運営において基準とする短期金利のことで、景気の調整や物価の安定を図るために用いられる重要な手段です。
また、政策金利は中央銀行が民間の金融機関にお金を貸し出すときの利率の目安となるほか、金融市場での短期金利にも影響を与える重要な指標でもあります。たとえば、日本銀行は「無担保コール翌日物金利」と呼ばれる金利を目標に設定し、市場に資金を供給したり回収したりすることで、金融市場全体の金利を調整しています。
利下げが行われると、民間の銀行はより低い金利で資金を調達しやすくなるため、個人や企業への貸付金利を引き下げられます。その結果、個人や企業がお金を借りやすくなり、消費や投資が増え、景気の改善が見込まれます。
ただし、金利を下げすぎるとインフレの加速や通貨価値の下落を招きかねません。そのため、日本銀行などの中央銀行は、経済指標や物価動向を総合的に判断しながら、政策金利を調整しています。こうした調整を通じて、景気の安定と物価の安定を両立することが、中央銀行の重要な役割です。
2. 利下げによる生活への影響は?
利下げが行われると、ローン金利の低下や企業活動の活発化を通じて、私たちの生活にも影響が生じます。ここでは、利下げがもたらすプラス面とマイナス面の影響について、具体的に見ていきましょう。
2.1 消費が拡大する
利下げによって、住宅ローンや自動車ローンなどの金利が下がると、毎月の返済額が減り、家計に余裕が生まれます。たとえば、金利が1%下がるだけでも、35年ローンで数百万円単位の利息が減るケースがあります。
一方で、企業も低い金利で資金を調達できるようになるため、新商品開発や設備投資に前向きに検討しやすくなるでしょう。企業活動が活発化すれば、新たな商品やサービスの供給が増え、消費がさらに刺激されるという好循環が期待できます。
2.2 雇用が拡大する
企業が設備投資などに資金を投入することで経済活動が活発化し、結果的に雇用が拡大します。利下げによって資金を借りやすくなると、企業は新たな事業展開を進めやすくなり、多くの人材を必要とするでしょう。さらに、消費が活性化すれば、製品やサービスの需要が高まり、生産や対応にあたる人手が必要になる場面が増えていきます。
雇用が拡大すれば、失業率が下がり、労働者の所得向上が期待できます。また、利下げによって個人の住宅や自動車への需要が高まれば、より幅広い産業分野に雇用の波及効果をもたらします。
たとえば、住宅が売れれば、ハウスメーカーだけでなく、建築資材、家具、家電など関連業界の需要も押し上げられます。同様に、自動車の販売が伸びれば、ディーラーや整備業者、ガソリンスタンド、損害保険、さらには部品や素材を供給する製造業など、多岐にわたる業種の需要が高まるでしょう。
このように、新たな雇用が生まれることで、働く場の選択肢が広がり、より多くの人が就業の機会を得られるようになります。
2.3 預貯金の利息が低くなる
利下げによって、銀行の預金金利が低下するため、預貯金で得られる利息が減ってしまいます。特に、日本のように超低金利が長期間続いている環境では、預金金利はほとんどゼロに近くなり、預貯金で資産を増やすことが難しくなるでしょう。
元本割れの心配がないという理由から、預貯金で資産を運用している方も少なくありません。しかし、利下げによって預金金利が下がると、資産が増えにくくなるだけでなく、物価が上昇している局面では実質的な資産価値が目減りしてしまう可能性もあります。
将来に向けた資産形成を考えるうえでは、こうした側面も理解しておくことが大切です。
3. 米国の利下げの影響は?
最近の世界経済では、米国の金融政策が国際的な注目を集めています。これは、米国の中央銀行である連邦準備制度(FRB)が利下げを行うと、国際的な資金の流れや為替レート、さらには各国の金利政策にまで影響を及ぼすからです。
特に、日本との金利差が広がったり縮まったりすると、ドルと円の需給バランスに大きな変動が生じます。たとえば、米国が金利を下げると、日米の金利差が縮小して相対的にドルの魅力が低下するため、円が買われやすくなり、円高に振れる可能性があるでしょう。円高が進むと、消費者が輸入商品を安く購入できる一方で、輸出企業の収益が減少する可能性があります。結果と、して日本の株価が下落する要因にもなり得るでしょう。
一方で、米国が利上げに転じて日米の金利差が拡大すると、ドルが買われ、円安が進みやすくなります。円安が進めば、輸出企業の収益は増えやすくなる一方、輸入コストの上昇によって食料やエネルギーなど生活必需品の価格が上がることが懸念されます。
このように、米国の金融政策がもたらす影響は、投資家や企業だけでなく、私たち消費者にも広がります。円高や円安など為替の変動が、輸入価格や生活コストに影響を与える点を理解しておきましょう。
4. 利下げのときにやるべきことは?
利下げが行われた際には、ローン金利の低下や投資環境の変化をうまく取り入れることが大切です。住宅ローンの借り換えや資産運用の見直しなど、金利動向やリスク許容度を踏まえて最適な対応を検討しましょう。
4.1 ローンの組み方を考える
利下げ局面では、住宅ローンや自動車ローンなどの金利が低くなるため、これから住宅や自動車を購入予定の方は、ローンの総返済額を抑えられる可能性があります。特に、固定金利型か変動金利型かの選択は、今後の金利上昇リスクや返済計画に大きな影響を与えます。
たとえば、低金利の時期に固定金利型を選ぶと、将来の返済額を一定に抑えられるメリットがあります。固定金利よりも金利が低い傾向がある変動金利型を選ぶことで、現時点の低金利を活用して、借入金の金利負担を抑えることが可能です。
どちらが適しているかは、借り入れ期間や返済負担の許容度によって異なります。また、すでにローンを組んでいる方も、利下げ局面では金利が低下しているローンに借り換えたほうが、総返済額が抑えられる場合があります。したがって、借換条件をチェックして返済負担を軽減できないか検討することをおすすめします。
このように、金利が下がっているタイミングを見極めながら、複数の金融機関の条件を比較することが大切です。
4.2 資産運用を検討する
利下げ局面では預貯金の金利が低下しやすいため、インフレが進むと資産価値が目減りしてしまう恐れがあります。そこで検討したい手段が、外貨預金や投資信託、株式投資などを活用した資産運用です。これらの資産には元本割れのリスクがあるものの、預貯金よりも高いリターンを目指せる可能性があります。
たとえば、外貨預金は円高時に為替差損のリスクがある一方、円建て預貯金よりも高い利回りを期待できる場合があります。さらに、円安局面では為替差益が得られる点もメリットです。
投資信託であればプロが運用を行うため、初心者でも分散投資の効果を得られます。投資経験が豊富な方であれば、株式投資に挑戦してみる方法もあります。
ただし、各金融商品は値動きやリスクの特性が異なるため、投資目的とリスク許容度を明確にしたうえで選ぶことが重要です。
東京スター銀行では、さまざまな預金商品を取りそろえていますので、以下のページも参考にしてください。
5. まとめ
利下げは、政策金利の引き下げによりローン負担が軽減され、消費や雇用が拡大する可能性がある点がメリットです。しかし一方で、預貯金の利息低下により、資産価値が目減りするリスクもあります。
さらに、米国の利下げは為替や日本の輸入コスト、輸出企業の収益にも影響を与えます。こうした局面を有利に活かすには、固定・変動金利の選択や借り換え、投資信託や外貨預金などを検討し、自分のリスク許容度に合った最適な方法を選ぶことが重要です。
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