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相続時にかかる税金とは?対象となる財産の種類や計算方法をご紹介

  • #税金

掲載日:2025年9月16日

相続税は、大切な財産を受け継ぐ際に課税される可能性がある税金です。亡くなった方(被相続人)から相続人へ財産が移る際に発生し、現金、不動産、有価証券など多岐にわたる財産が対象となります。

この記事では、相続税の基本的な仕組みから、どのような財産が課税対象となるのか、また贈与税との違いや計算方法、申告・納税手続きまでをわかりやすく解説します。

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1. 相続税の仕組みと課税対象

相続税は、被相続人(亡くなった方)の財産を相続人が受け継ぐ際に課されるもので、その仕組みや課税対象は多岐にわたります。ここでは、相続税の基本的な定義について解説します。どのような財産が課税対象になるのか、また贈与税との違いについても詳しく見ていきましょう。

1.1 相続税とは

相続税とは、亡くなった方(被相続人)から財産を受け継いだ方(相続人)に課される税金です。被相続人の遺言や民法の規定に基づいて、現金、不動産、有価証券など、さまざまな財産が相続税の課税対象となります。

相続税は、被相続人が亡くなったという事実によって発生し、相続人が財産を受け継いだ際に納税義務が生じます。この税金は、世代を超えて富が集中することを防ぎ、富の再分配を促すことを目的としています。

1.2 課税対象になる財産の種類

相続税の課税対象となる財産は多岐にわたります。主な財産は以下の通りです。

【相続税の課税対象になる財産】

  • 現金・預貯金
  • 土地や建物(一戸建て、マンション、アパートなど)
  • 有価証券(株式、公社債、投資信託など)
  • 生命保険金(一定の要件を満たし、非課税枠を超える部分が課税対象)
  • 退職手当金等(生命保険金と同様に一定の非課税枠がある)
  • 動産(自動車、船舶、美術品、骨董品、貴金属など、価値のあるもの)
  • その他の権利(ゴルフ会員権、著作権、特許権、第三者への貸付金のうち返済期限がきていないものなど)

一方で、相続税の対象とならない財産もあります。代表的なものは以下の通りです。

【相続税の課税対象とならない財産】

  • 墓地や仏具(墓地、墓石、仏壇、仏具、神棚など)
  • 生命保険金・退職手当金等の非課税枠(法定相続人1人あたり500万円まで)
  • 国や地方公共団体に寄付した財産

1.3 贈与税との違い

相続税と混同しやすい税金に贈与税があります。相続税と贈与税は、どちらも財産の移転に対して課される税金ですが、課税されるタイミングと対象財産が異なります。

相続税と贈与税の違い
相続税 被相続人が亡くなった時点で保有していたすべての財産(みなし相続財産を含む)に対して課税される税金。
贈与税 生前に贈与された財産に課税される税金。
※ 生命保険金など、被相続人が亡くなったことがきっかけで受け取る財産のこと

生前贈与は相続税対策として活用されることがありますが、税制改正により、2024年1月1日以降に行われた生前贈与は、相続開始前7年以内に被相続人から贈与を受けた財産が相続税の課税対象に含まれます。ただし、相続開始前4年〜7年以内の贈与については、総額100万円まで相続財産から控除できます。

2. 相続税の計算方法

相続税の計算は、いくつかのステップを踏むことで算出できます。
ここでは、相続税の計算方法を詳しく見ていきましょう。

【Step1】相続財産の評価

まず、被相続人が所有していたすべての財産を洗い出し、それぞれの評価額を算出します。評価の方法は、財産によって異なります。例えば、土地や不動産の評価額は、路線価や固定資産税評価額などを基に算出されます。また、有価証券の評価額は、上場株式の場合、亡くなった日の終値、非上場株式の場合は会社の規模などに応じて評価されます。

【Step2】非課税財産や債務、葬式費用を差し引き正味の遺産額を算出

相続税法で非課税とされる財産(仏具など)や、被相続人が負っていた債務、そして葬式費用などを控除します。相続財産の評価額から、これらを差し引いたものが「正味の遺産額」となります。

【Step3】課税価格の計算

正味の遺産額に、相続開始前7年以内に被相続人から贈与された財産(生前贈与財産)があれば、それを加算して課税価格を算出します。

【Step4】課税遺産総額の算出

相続税には「基礎控除」という非課税枠が設けられています。この基礎控除額を、算出した課税価格から差し引きます。

正味の遺産額と、加算すべき生前贈与財産の対象となる財産を合計した金額が基礎控除額を超えた場合、その超えた部分が「課税遺産総額」となります。相続税はこの課税遺産総額に対して課税されるため、基礎控除額以下の場合は相続税はかかりません。

【Step5】相続税の総額の計算

課税遺産総額を法定相続分で按分し、各人の税額を計算して合算します。

実際の計算にあたっては、課税遺産総額を民法に定める法定相続分に従って取得したものと仮定します。そのうえで、各法定相続人の法定相続分に応じた取得金額を算定し、これを下記の相続税の速算表に当てはめて、相続税の総額の基となる税額を算出します。

【相続税の速算表】
相続税の速算表
法定相続分に応じた取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% なし
1,000万円超~3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超~5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超~1億円以下 30% 700万円
1億円超~2億円以下 40% 1,700万円
2億円超~3億円以下 45% 2,700万円
3億円超~6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円
出典:国税庁No.4155 相続税の税率

【Step6】各人の納付税額の計算

相続税の総額を実際の相続割合で按分し、各種控除を適用して最終的な各人の納付税額を計算します。

3. 基礎控除の仕組み

相続税は、亡くなった人(被相続人)の遺産すべてにかかるわけではなく、正味の遺産額と加算すべき生前贈与財産の対象となる財産を合計した金額から、基礎控除額を差し引いた金額に対して課税されます。

正味の遺産額とは、被相続人のプラスの財産(預貯金や土地など)から、マイナスの財産(債務や葬儀費用など)を引いた金額のことです。

基礎控除とは、相続税を計算する際に設けられている非課税枠のことです。この基礎控除額が大きければ大きいほど、実際に支払う相続税の金額は少なくなります。

【基礎控除額の計算方法】
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

例えば、法定相続人が配偶者とお子さん2人の計3名の場合、基礎控除額は「3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円」となります。

  • 正味の遺産額が基礎控除額を超える場合:相続税の申告と納税が必要です
  • 正味の遺産額が基礎控除額以下の場合:原則として、相続税の申告も納税も不要です

先ほどの例(基礎控除額4,800万円)でいえば、正味の遺産額が4,800万円以下であれば、相続税は発生しません。正味の遺産額が基礎控除額を超えた場合は、超えた部分に相続税が課税されることになります。

4. 相続税の申告・納付手続き

相続税は、正味の遺産額が基礎控除額を超えた場合に申告・納付が必要となります。ここでは、申告が必要なケースと不要なケース、そして申告・納税の手続きについてご説明します。

4.1 申告が必要なケースと不要なケース

相続税の申告が必要となるのは、原則として正味の遺産額が基礎控除額を超える場合です。この場合、相続税の納税義務が生じるため、税務署への申告が必要になります。一方で、正味の遺産額が基礎控除額以下である場合は、相続税が発生しないため、原則として申告は不要です。

ただし、特定の控除や特例を適用することで相続税額がゼロになる場合でも、相続税の申告は必須となります。これは、これらの控除や特例を適用する条件として、税務署への申告が義務付けられているためです。代表的な控除・特例には以下のものがあります。

  • 配偶者の税額の軽減(配偶者控除):配偶者が相続した財産のうち、法定相続分相当額または1億6,000万円のいずれか多い金額までは、相続税がかかりません。
  • 小規模宅地等の特例:被相続人が居住していた宅地や事業用宅地など、一定の要件を満たす宅地について、評価額を最大80%減額できる特例です。
  • 未成年者控除:相続人が未成年である場合、一定の計算式に基づいて相続税額が控除されます。
  • 障害者控除:相続人が障害者である場合、一定の計算式に基づいて相続税額が控除されます。

これらの控除や特例の適用により相続税がかからなくなる場合でも、必ず税務署に申告書を提出する必要があるため、注意しましょう。

4.2 申告・納税の期限と手続きの流れ

相続税の申告と納税の期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヵ月以内と定められています。期限を過ぎてしまうと、延滞税や加算税などのペナルティが課される可能性があるため、余裕をもって手続きを進めることが重要です。
相続が開始した場合、以下の流れで進めていきます。

1.遺言書の確認と相続人の確定

まず、遺言書の有無を確認します。遺言書がある場合はその内容に沿って遺産分割を進め、ない場合は民法の規定に基づいて相続人を確定します。

2.相続財産・債務の調査と評価

被相続人名義の銀行口座や証券口座、不動産の有無などを確認し、現金、預貯金、不動産、有価証券など、すべての相続財産を洗い出します。同時に、借金やローン、未払金などの債務、葬儀費用が残っていないかどうかも確認し、それぞれの評価額を算出します。

3.遺産分割協議

相続人が複数いる場合は、誰がどの財産をどれだけ相続するかを話し合い、遺産分割協議書を作成します。

4.相続税額の計算

相続財産の評価額や債務などを基に、相続税額を計算します。基礎控除額などを差し引いた課税対象額に対して税率を適用し、具体的な相続税額を算出します。

5.相続税申告書の作成

相続税額の計算に必要な各種書類(戸籍謄本や財産評価に関する書類など)を揃えたうえで、税務署が定める相続税申告書に必要事項を記入し、添付書類を準備します。

6.申告書の提出

作成した相続税申告書と必要書類を、相続開始時の被相続人の住所地を管轄する税務署へ期限内に提出します。提出方法は、税務署への持参、郵送、またはe-Tax(電子申告)があります。

7.相続税の納付

申告した相続税額を、金融機関やコンビニエンスストアなどで納付します。納付方法には振込や電子納税、または窓口での現金納付などがあります。資金が不足しているときは、「延納」や「物納」などの制度の利用も検討できますが、それぞれ要件がありますので事前に確認が必要です。

相続手続きは専門的な知識が必要となるため、ご自身で行うことが難しいと感じる場合は、税理士や弁護士などの専門家に相談することも検討しましょう。

5. 相続税以外に関係する税金

相続が発生した場合、相続税以外にもいくつかの税金が関係する可能性があります。これらの税金も考慮に入れて、資金計画を立てることが重要です。

  • 登録免許税:不動産を相続した場合、その所有権を相続人へ移転する登記を行う際に課される税金です。税額は、不動産の固定資産税評価額に一定の税率を掛けて算出されます。
  • 不動産取得税:相続による不動産の取得には、原則として不動産取得税は課されません。しかし、遺贈(遺言によって財産を贈与すること)によって不動産を取得した場合や、相続時精算課税制度を適用して生前に不動産を贈与されていた場合、不動産取得税が課される可能性があります。
  • 譲渡所得税:相続した土地や建物を売却して利益が出た場合、「譲渡所得税」が課税されます。これは相続税とは異なり、売却益に対してかかる税金です。相続した不動産を売却する際には、特例が適用される場合もあるため、専門家に相談しましょう。
  • 準確定申告に係る所得税:被相続人が確定申告をする必要があった場合、相続人が代わりに準確定申告を行い、所得税の納付が必要です。

これらの税金は、相続税とは別に納付が必要となるため、事前に確認しておくことが大切です。

6. まとめ

相続税は、大切な財産を受け継ぐ際に課税される可能性がある税金です。その仕組みや計算方法、申告・納付の手続きを正しく理解することは、スムーズな相続を実現するために不可欠です。
もし相続に関する手続きや資金計画でご不安な点があれば、専門家へのご相談や金融機関のサービス活用もぜひご検討ください。

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