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退職金の効果的な資産運用方法は?失敗しないための注意点も解説

  • #資産運用
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掲載日:2018年11月1日
最終更新日:2024年3月11日

定年退職が近づいてくると、退職金の使いみちを検討しなければなりません。
老後(セカンドライフ)のライフイベントに必要な資金をしっかり把握して、10年ごとの生活をイメージしてみることが重要です。
今回は、退職金の運用方法についての相談事例をご紹介します。

この記事は5分で読めます!

1. 退職金の運用が必要な理由

これまで勤めてきた会社を退職して退職金を受け取り、まとまった時間とまとまったお金ができるからと、旅行などの余暇費用に充てたり、大きな買い物などをしようと考えている方もいらっしゃるかもしれません。退職金は老後生活を支える大切なお金でもあるため、退職金を運用しながら老後を過ごす必要性が高まっています。

退職金の運用が必要な主な理由は、以下の3点です。

  • 退職金が減少傾向にある
  • 平均寿命が伸びている
  • 年金受給額が増えない傾向にある

厚生労働省の調査結果を見てみましょう。
平成20年と令和5年の平均退職給付額を比較すると384万円減少しており、退職金は年々減少していることがわかります。

平均退職給付額
調査年 1人平均退職給付額(定年)
平成20年 2,280万円
平成30年 1,983万円
令和5年 1,896万円
  • 大学・大学院卒(管理・事務・技術職)1人平均退職給付額
  • 勤続20年以上かつ45歳以上の退職者

老後資金は2,000万円程度必要と言われることもありますが、退職金だけでは不十分な方もいるでしょう。

また、医療の進歩などにより日本人の平均寿命は男女ともに伸びています。老後が長くなれば老後に必要な資金も増えていくため、退職金の運用を検討する必要がでてきそうです。

平成2年と令和4年の平均寿命を比較すると、男女それぞれ約6歳延びています。

男女の平均寿命
調査年 男性の平均寿命 女性の平均寿命
平成2年 75.92歳 81.90歳
平成27年 80.75歳 86.99歳
令和4年 81.05歳 87.09歳

さらなる医療環境の充実、個人の健康意識の向上などにより、平均寿命は今後も延びる可能性があります。人生100年時代ともいわれていますので、老後資金の確保はより重要となるでしょう。

また、日本の物価上昇も影響しています。令和5年の平均消費者物価指数によると、前年の令和4年と比較し3.2%上昇しています。食料は8.1%の上昇、家具・家事用品は7.9%の上昇、被服および履物は3.6%の上昇と、特に生活に直結する品目の物価が上昇していることがわかります。今までと同じ生活をしても支出が増えていくことになります。

令和5年度の年金額の例(67歳以下の場合)
令和5年度(月額) 令和4年度(月額)
国民年金※1 66,250円 64,816円
厚生年金※2 224,482円 219,593円
  1. ※1国民年金(老齢基礎年金(満額))
  2. ※2厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)

令和5年4月から受け取れる老齢年金の額については、67歳以下の方は前年から原則2.2%の引き上げ、68歳以上の方は原則1.9%の引き上げとなりましたが、物価上昇が続いた場合、今後の老後生活はさらに厳しい状況になると考えられます。

退職金を取り崩すのではなく、運用して資金を増やすことができれば老後生活にゆとりが生まれるでしょう。

2. 退職金の主な運用方法を紹介

退職金の運用方法は複数ありますが、ここでは主な運用方法である個人向け国債、投資信託、株式について紹介します。それぞれの特徴を理解したうえで、自分にあった退職金の運用方法を選んでいきましょう。

運用方法① 個人向け国債

個人向け国債は、半年ごとに利子を受け取ることができる国が発行する債券で、銀行などの金融機関で1万円から購入できます。さらに、国債は年12回発行されるため、いつでも気軽に運用を始められるメリットがあります。
また、元本割れがなく0.05%の最低金利が保証されているので、低リスクで退職金を運用したいという方に向いています。

ただし、個人向け国債は預貯金と同様に金利が低めです。短期間で資産を大きく増やすことが難しいことに加え、満期前にお金が必要となったときでも原則として発行から1年間は中途換金ができません。また、中途換金する場合には中途換金調整額が差し引かれるリスクがあることも覚えておきましょう。

運用方法② 投資信託

投資信託は、投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、集まったお金を運用の専門家が運用し、運用の成果を投資家それぞれの投資額に応じて分配する金融商品です。

運用の専門家は、投資家から集めたお金を国内や海外の債券や株式、不動産などに分散させ運用するのが投資信託の特徴です。

投資信託は少ない金額から購入が可能なので、運用を始めやすいことがメリットです。さらに、運用は専門家に任せられ、自分で株式や債券などの個別の銘柄を決める必要もありません。

ただし、投資信託は元本が保証されている金融商品ではないため、運用がうまくいかない場合は投資した額を下回り損するリスクがあります。また、投資信託の購入時には購入時手数料、運用中には運用管理費用(信託報酬)などの費用負担が発生します。

運用方法③ 株式

株式とは、株式会社が資金を集めるための方法のひとつです。お金を出資してもらった株主に対して発行する有価証券を株といい、株主は株を買うことで株主総会の出席や議決権行使の提出を通じて会社経営に参加できる権利を得られます。株は発行している会社から買うのではなく、他の投資家が証券取引所に売りに出している株を、金融機関を通じて購入します。

株の価格には動きがあるため、安い価格で買って高い価格で売ることで売買益を得ることができます。また、株主になることで株主優待や配当金などを得られるメリットもあります。

ただし、買ったときの価格より価格が下がってしまうと損失が発生するリスクもあります。売買のタイミングや銘柄の選定には、知識と経験が必要になります。

3. 退職金の運用リスクを軽減するには

退職金の運用など資産運用には、儲かるか損するかが分からないというリスクがともない、リスクをゼロにすることはできません。しかし、分散投資、長期投資、積立投資など投資方法を工夫することで、リスクを軽減することは可能です。

分散投資

退職金の運用リスクを軽減する方法のひとつに分散投資があります。
分散投資とは、投資する銘柄を分散させたり、投資する地域を分散させたり、投資する時期を分散させることです。株式や投資信託などは価格が変動するため、ひとつの商品に全額投資してしまうと、価格が下がったときに大きな損失を出してしまう可能性があります。

分散の方法としては、債券や株式、投資信託などから値動きの異なる複数の金融商品を購入する銘柄に分散する、ひとつの国に投資すると固有の事情で価格が下がってしまうことがあるため投資先の地域や国などを分散する、同じ銘柄を購入する場合でも一度にまとめて購入するのではなく、投資する時期を分散させる時間の分散などが有効です。

分散投資をするとリスクが分散され、安定したリターンが見込めますが、その一方でハイリターンが得られる確率は下がります。

長期投資

退職金の運用リスクを軽減する2つ目の方法は長期投資です。
株式などの金融商品は日々価格が変動するため、売買のタイミングによっては損失が大きくなることがあります。老後資金を確保するために退職金を運用する場合、ハイリターンを求めてハイリスクになりすぎると老後資金が減少してしまうかもしれません。

短期的な投資はハイリスク・ハイリターンとなることもあるため、5年や10年、15年などの長期間を見据えて運用できる投資方法を選ぶことでリスクを軽減させることができます。
さらに長期投資は頻繁に売買しないため、投資のためにかける時間を抑えられたり、値動きに一喜一憂することなく精神的な負担も軽く無理せず続けられたり、複利効果が期待できるなどのメリットもあります。
その一方で、短期的な利益は得られにくいデメリットもあります。

積立投資

退職金の運用リスクを軽減する3つ目の方法は積立投資です。
積立投資とは、毎月1万円ずつなどあらかじめ金額を決めて、株式や投資信託などの購入を継続していく方法です。
定期的に一定額を購入すると、価格が安いタイミングではたくさん購入でき、価格が高いタイミングでは購入量が小さくなります。購入を継続することで結果的には平均購入金額が抑えられ、リスクの軽減に効果的です。この方法は、ドルコスト平均法とも呼ばれています。

積立投資は少額から始められ、毎月お金が積み上がっていき、ドルコスト平均法により高いときにたくさん買わなくてすむというメリットがあります。
その一方で、退職金で大きな金額を持っているのに少しずつしか買えないというストレスを感じるかもしれません。

4. 退職金の運用方法についての相談事例

相談事例をもとに、退職金の受け取り方や10年ごとの生活をイメージしながらライフイベントそれぞれの収支を把握し、老後に必要となるお金と退職金の運用について考えてみましょう。

前提条件

(赤坂さん)
3月末に65歳を迎え、定年退職となるサラリーマン
(今回のご相談内容)
4月以降は、関連会社での再就職も決まっているが、収入は大幅にダウンする予定。
70歳くらいまでは働きたいと思っているが、年金暮らしになるときのために、退職金をうまく活用したいと考えている。
具体的にどのように資産を管理したらよいかも含めて相談にいらした。

① 退職金の受け取り方

星さん

まもなく定年退職されるのですね。

赤坂さん

はい、3月末で定年退職です。
ただ、4月以降も関連会社で働くことが決まっています。
一応、1年更新の契約で、その後はどうなるかはわかりません。
自分としては、70歳くらいまでは仕事をしたいという気持ちはあります。

星さん

退職金は、一括して受け取られるご予定ですか?

赤坂さん

いえ、退職一時金プラス退職年金という形になります。
退職一時金として約1,000万円受け取りますので、そのお金をうまく活用できればと考えています。

星さん

赤坂さんのように大学を出て、大企業に定年までお勤めの場合、平均的な退職金と退職年金の合計額は約2,256万円となるそうです。※

おおよそ半分を年金で、もう半分を一時金で受け取られる方は多いかもしれませんね。
一時金をすぐに使われるご予定はありますか?

(※参考(社)日本経済団体連合会「2018年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」の概要)

赤坂さん

一応、70歳までは再就職先の給与で夫婦2人で生活しようと考えています。
幸いにも、住宅ローンも残っていませんし、家の耐震リフォームも終わったばかりですので、当面大きな出費予定はありません。
現役の頃に比べると収入は半分ほどになりますが、何とか生活できると思います。

星さん

では、退職一時金については、少なくとも5年以上の運用期間は見込めるということになりますね。

赤坂さん

はい、そうです。
何か緊急の出費があったとしても、現在の預貯金でまかなえると思います。

② ライフイベントの収支を把握

星さん

それでは、セカンドライフ全般のイベントを収入と支出に分けて少し整理してみましょう。
具体的に、60代、70代、80代のそれぞれ10年で3段階に分けて考えてみましょう。

赤坂さん

10年単位だと、かなり具体的にプランが描けそうですね。

60代は仕事を続ける予定なので、現役時代とあまり変わらず、公的年金等はあてにせずに、家計を見直しながら給与収入で生活しようと思っています。
都内に住んでいますので、今まで同様、車も必要ありません。
ライフイベントとしては、65歳の再就職が一番大きなイベントですが、70代には夫婦や娘家族と一緒に、旅行など余暇も楽しみたいと考えています。

星さん

赤坂さんの場合、再就職が決まっていらっしゃいますので、家計を見直しながら生活していくことで、しばらくは特に余裕資金を使わなければいけないというご心配はあまりなさそうですね。

赤坂さん

次は、70代ですね。

そろそろ健康的な不安が出てきそうですね。
月々の生活資金は公的年金と退職年金からまかなおうと思いますが、もしかしたら、家のバリアフリー化などのリフォームが必要になるかも知れません。

星さん

確かに、70代になりますと、今まではあたりまえだったことが出来なくなり、健康への不安が出てくるかも知れません。
そうならないように、今から少し健康を意識してご夫婦で何かされるのもよいかと思います。
おっしゃるとおり、70代での収入は年金中心となります。
日常生活の収支は問題なくても、急な出費や医療費などに使える融通のきく予備のお金を準備されておくと安心ですね。

赤坂さん

80代となると、そろそろ寿命かもしれませんね(笑)。
家内が一人で残る可能性が高いですが、そのへんの資産管理もきちんとしておかないといけないですね。

星さん

平均寿命を考えますと、やはりご主人さまが先立たれるケースが多いです。
奥さまがずっとお一人で生活される場合を考えますと、奥さまご自身の余裕資金があれば、個人年金保険にご加入されるという選択肢もあります。他には相続なども視野に入れて、資産管理をする必要が出てきます。

赤坂さん

もちろん、一番の理想は二人で健康に長生きすることですね。

星さん

本当にそうですね。
それが一番の理想です。

③ 老後(セカンドライフ)に必要となる資金

星さん

セカンドライフに必要になる資金を整理しますと、
「ご夫婦の生活資金」「予備資金」「ゆとり資金」の3つです。

60代、70代、80代とライフプランのイメージができましたので、それぞれに必要なお金の額もだいたい予想できると思います。

赤坂さん

そうなると、すぐに使わない「ゆとり資金」などは、長期間の運用商品にまわせるということですね。

星さん

おっしゃるとおりです。
いつどのくらいお金を使うのかをイメージできれば、逆に使わない期間というのが見えてきます。

たとえば、70代用の「予備資金」は、元本は減らしたくないとお考えだと思いますが、10年間は使わないと決まっているのですから、通常の定期預金より高い金利の仕組み預金を選択肢に入れることができるようになります。

運用商品をどれにしようかと迷うよりも、使わない期間を決めてから商品を考えると選択肢がより明確になるのではないでしょうか。

10年後には金融情勢も変わってくる可能性がありますので、必要に応じて適宜見直しをしていくというのが理想です。

赤坂さんのセカンドライフはこれからです。
ゆとりのあるセカンドライフが送れるよう、まずは、東京スター銀行のお金の未来診断でお金の未来を分析してみませんか?

赤坂さん

お金の未来を分析?おもしろそうですね。ぜひお願いします。

星さん

かしこまりました。

東京スター銀行のお金の未来診断のススメ

今回の相談事例はいかがだったでしょうか?

老後(セカンドライフ)の必要資金をしっかり把握して、退職金の受け取り方や使いみちを明確にし、運用に回せる資金を確保することで、将来の安定したライフプランを計画することができます。

東京スター銀行では、将来のライフプランをシミュレーションできる、ライフプランツールでお客さまの未来のお金を診断する「お金の未来診断」をご提供しております。

定年退職時に慌てないように、早めにお金の未来を診断しておくことをおススメいたします。

5. 退職金運用のことなら”東京スター銀行”にお任せください

セカンドライフに必要な資金は「ご夫婦の生活資金」「予備資金」「ゆとり資金」の3つです。それぞれに必要なお金の額を予想して、旅行などの余暇を楽しみつつも、生活やゆとりのために退職金の運用を考えておきましょう。
退職金の運用には個人向け国債、投資信託、株式などさまざまな運用方法があります。退職金の運用を行う上でリスクをゼロにすることはできませんが、分散投資・長期投資・積立投資などを組み合わせることで、リスクを軽減することは可能です。

また、初めて資産運用をする方や、運用に不安がある方は、退職金の運用を始める前に専門家に相談することをおすすめします。また、一度決めたプランも、必要に応じて適宜見直しをしていくというのが理想です。

退職金運用や投資について疑問がある方は、ぜひ東京スター銀行にご相談ください。

東京スター銀行では退職金の運用はもちろん、年金のこと、老後資金のことなど、将来の資金の不安についてなんでもご相談していただける、オンライン相談サービスを提供しています。オンライン相談予約は、以下の公式サイトからお申し込みください。

6. まとめ

これまで勤めてきた会社を退職するときに受け取る退職金は、老後生活を支える大切な資産です。まとまった時間とお金ができたからと、旅行や大きな買い物などに多くを使ってしまわずに、老後生活のプランを想定し退職金を運用することも考えておきましょう。
東京スター銀行で、退職金の運用について相談されることもお薦めします。

【ライター情報】
杉浦詔子

CFP@認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、産業カウンセラー、キャリアコンサルタント
「働く人たちを応援するファイナンシャルプランナー/カウンセラー」として、働くことを考えている方からリタイアされた方を含めた働く人たちとその家族のためのファイナンシャルプランニングやカウンセリングを行っております。

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