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テレビでよく聞くNYダウってなに?NYダウをやさしく解説

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掲載日:2020年6月26日

日本でもその推移が頻繁に報道されているNYダウは、米国の株式市場の全体的な値動きを示す株価指数です。そして、その先行きを反映するNYダウ先物の動きも、米国市場はもちろん、日本の株式市場にも影響を及ぼすと言われています。

だとすれば、実際に投資するわけではなくとも、NYダウやNYダウ先物に関する基礎知識を身につけておけば、日本の株式市場の先行きを展望するうえでも役立ちそうです。そこで、今回はNYダウとNYダウ先物について、 わかりやすく解説します。

執筆者プロフィール
大西 洋平
出版社勤務などを経て独立し、フリーのジャーナリストとして活動。「ダイヤモンドZAi」をはじめとするマネー誌や、「週刊ダイヤモンド」、「プレジデント」、「週刊朝日」などの一般雑誌やオンラインメディアにおいて、金融・経済の分野を中心に執筆活動を続けている。

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1. そもそもNYダウとは何か

実は、ニューヨークダウ(NYダウ)という呼び方はニックネームのようなもので、正式名称は「ダウ工業株30種平均」です。ウォール・ストリート・ジャーナルを発行するダウ・ジョーンズ社が発表する平均株価指数で、ニューヨーク証券取引所やナスダック市場に上場している代表的な30銘柄の推移をもとに算出しています。

名称に「工業株」と入っていますが、時代の流れに合わせて随時入れ替えが行われており、現在はもっと幅広い業種のものによって構成されています。1896年から算出が始まった世界で最も長い歴史を誇る指数で、米国の株式市場の全体的な動きを示してきました。

そしてNYダウ先物とは、NYダウを先物取引で売買する金融商品のことです。次では、先物取引とは何か、解説します。

2. NYダウの先物取引って、どういうこと?

先物取引とは、株式の個別銘柄や株価指数など、特定の投資対象を将来の決められた日(決済期日)に、あらかじめ定めた価格で売買することを約束するというトレードです。NYダウを対象としたNYダウ先物では、現時点の先物価格で決済期日の同指数を買う(もしくは売る)といった取り決めを行います。

NYダウ先物の先物価格は、決済日までの期間が長いほど現実の株価指数(NYダウの時価)とのかい離(格差)が大きくなりがちです。しかし、決済期日が近づくにつれてその時点のNYダウ(時価)に収れん(接近)していき、当日にはほぼ同じ価格になります。

こうしたことから、先々で相場の上昇が見込まれそうな場面では、NYダウ先物で買い注文を入れるのが有効です。実際にそのような展開になれば、割安なうちに仕込んで高い価格で売る(決済を行う)という結果となり、値上がり益を得られます。

逆に相場の下落を予感した場面では、NYダウ先物でその時点の先物価格において売り注文を出しておくことも可能です。予想通りにNYダウが下落すれば、過去に高い価格で出していた売りのポジションをそれよりも安い先物価格(決済価格)によって清算することになり、その価格差が利益となってきます。

3. NYダウ先物のメリット・デメリットは?

このように、NYダウの上昇が期待される局面だけでなく、下落が予想される局面でも双方向で利益を追求できるのがNYダウ先物のメリットの一つです。

また、前述したように先物取引は、期日に先物価格で買う(もしくは売る)ということを約束する取引です。その取り決めをきちんと実行することを保証するために、取引額の所定の割合に当たる証拠金(担保)を預けるルールになっています。

言い換えれば、本来なら取引に必要となる全額を用意しなくても、その一部に相当する証拠金を用意するだけで取引できるわけです。

例を挙げれば、取引額の35分の1にすぎない証拠金で預けるだけで、先物でなければ必要となる資金(取引額の全額)を投じたケースと同じ利益を期待できます。こうして効率的に大きなリターンを追求できることを、レバレッジを効かせる(テコの原理を働かせる)と表現し、その点もNYダウ先物の魅力となっています。

その反面、相場が期待に反した動きを示して損失が出た場合にも、レバレッジが効いてしまうことになります。つまり、預ける証拠金を極力抑えてレバレッジの倍率を高くしてしまうと、ちょっとした相場の変化で大きな損失を被る恐れも出てくるのです。

加えて、先に述べたように先物取引には期日が定められており、それまでに必ず決済を行わなければなりません。損失を抱えたままその日を迎えても、「もう少し辛抱して相場の反転を待つ」といった選択肢は残されていません。

これらのデメリットや注意点を踏まえると、初心者にとってNYダウ先物はハードルが高い取引だと言えるでしょう。投資経験がゼロ(もしくは乏しい)状態でいきなり始めても、そう簡単には利益を得られにくいのが現実で、多くの金融機関も初心者が先物取引の口座を開設することを受け付けていません。

したがって、より多くの人たちが取り組みやすい選択肢となるのは、NYダウや NYダウ先物ではなく、米国の株式市場を投資対象とした投資信託だと言えそうです。

4. NYダウ先物はどこで取引できるの?

日本取引所グループでは、午前8時45分〜午後3時15分(日中立会)、午後4時30分〜翌午前5時30分(夜間立会)の時間帯において、円建てでNYダウ先物の取引が可能となっており、証券会社を通じて同市場において売買が可能です。米国市場の取引時間は日本時間で午後10時30分〜午前5時(夏時間の場合)となっており、夏時間が適用されている期間中はすべての取引時間がカバーされています。

他にもCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)やSGX(シンガポール取引所)など、世界の主要市場でNYダウ先物は取引されており、そういった市場での売買に対応した証券会社も存在しています。つまり、ほぼ24時間にわたってリアルタイムで取引できる環境が整えられているわけです。

5. NYダウ、過去の値動きのポイント

1896年に算出が始まってから今日に至るまで120年超に及ぶNYダウの歩みを振り返ってみると、1,000ドルに遠く及ばなかったものが一時は3万ドルに迫ったように、驚異的な上昇を遂げてきたことを確認できます。2020年2月下旬から発生したコロナショックで史上最大の下げを記録した後でさえ、スタート地点の数十倍の水準を保っていました。

バブル最高潮の1989年につけた3万8,957円の壁をいまだに突破できない日経平均株価とは違い、NYダウは史上最高値を更新し続けてきたからです。その間、1929年の世界恐慌、1987年のブラックマンデー、2001年の同時多発テロ事件、2008年のリーマンショックといったように、数々の暴落局面も到来しました。

新型コロナウイルスの大流行問題を克服した後、再び史上最高値更新に挑むのかどうかについて、正確に予想することは誰にも適いません。しかしながら、少なくとも過去120年超の歩みにおいては、暴落を乗り越えてさらに高みをめざしてきています。

米国の株式市場を投資対象とした投資信託なら、こうしたNYダウの推移を反映した運用成果を期待できそうです。ただし、あくまでここで述べたのは過去の推移であり、必ずしも将来的に同様のことが言えるとは限らないのも確かです。

6. NYダウ先物よりも初心者向けの方法で投資を始めよう!

NYダウ先物は、世界で最も注目されている株価指数であるNYダウの先行きを予想しながら売買し、レバレッジを効かせてハイリターンを追求できる取引です。NYダウは長い歴史の中で長期的な上昇を遂げてきており、過去の暴落もつねに克服してきたので、一見すると魅力的な取引、というように映るかもしれません。

しかしながら、NYダウ先物は基本的に中長期で決済する取引手法ではないため、相応の投資経験が求められる取引であることも確かです。米国の株価指数に連動する投資信託など、初心者でも気軽に始められる手段を通じて、コロナショックを乗り越えた後の株式市場復活に期待するのも一考でしょう。

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