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支給額は?条件は?加給年金について詳しく知ろう

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掲載日:2025年2月17日

会社員や公務員が65歳で厚生年金を受け取る際、一定の要件を満たしていると加給年金という年金が上乗せされて支給されます。加給年金は請求しなければ受け取れないため、受給条件を正しく理解することが大切です。また繰り下げ受給をしている間は利用できないといった注意点もあります。

この記事では加給年金の支給条件や支給額のほか、申請方法や注意点について解説しています。

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1. 加給年金とは?

加給年金とは、厚生年金の被保険者が65歳になった際、一定の条件を満たしたときに老齢厚生年金に割り増しされる形で受け取れる年金のことです。

配偶者もしくは子どもがいるときに加算される仕組みであるため、扶養手当と同様の役割を持ちます。ただし加給年金の受給や、受給の終了時は手続きが必要になるため、条件や手続き方法を理解しておくことが大切です。

2. 加給年金の対象者と支給される条件は?

加給年金の受給要件は、受給権者(厚生年金の被保険者)と、加給年金の対象者(配偶者・子ども)それぞれに要件があります。加給年金の受給要件について詳しく紹介します。

2.1 厚生年金に20年以上加入している

加給年金を受け取るためには、厚生年金に20年以上加入していることが必要です。厚生年金とは主に会社員など企業に勤めている人が加入する年金制度です。

日本の年金制度は、すべての20歳以上60歳未満の人が加入する国民年金(基礎年金)と、会社員・公務員の人が加入する厚生年金保険の2つがあります。

法人の事業所で常時従業員を使用する事業所や、常時5人以上の従業員が働いている事業所および工場、商店などの個人事務所は法律で厚生年金の加入が義務付けられています。

2.2 条件を満たした配偶者、または18歳未満の子どもがいる

加給年金の受給要件は、65歳時点で対象者に生計を維持されている配偶者や子どもがいることです。なお、配偶者の年齢は65歳未満であることが条件です。ただし、大正15年4月1日よりも前に生まれた配偶者には年齢制限がありません。届出をしていなくても、事実上婚姻関係と同様の事情(内縁関係)にある人も含まれます。

また生計を維持されている子どもの条件は、18歳到達年度の末日までの間の子ども、または1級、2級の障害の状態である20歳未満の子どもであることです。

なお「生計を維持されている」とは以下いずれの要件を満たす場合のことを指します。

  • 生計を同じくしていること。同居していなくても、仕送りをしている、健康保険の扶養親族であるなどの事項があれば認められる
  • 前年の収入が850万円未満、または所得が655万5,000円未満

3. 加給年金の支給金額は?

加給年金の支給金額は、加給年金の対象者や受給権者の生年月日によって異なります。また加給年金の対象者が配偶者の場合、配偶者が65歳になると加給年金を受け取れません。そこで「振替加算」と呼ばれる年金を受け取れる場合があります。以下で、加給年金や振替加算の支給額について解説します。

3.1 加給年金で支給される金額

加給年金で支給される金額は、対象となる人によって以下のように異なります。

加給年金で支給される金額
対象者 加給年金額
配偶者 234,800円
1人目・2人目の子 各234,800円
3人目以降の子 各78,300円
出典:日本年金機構「加給年金額と振替加算」

また加給年金の対象者が配偶者の場合、受給権者の生年月日に応じて特別加算額として以下の金額が加算されます。

配偶者加給年金額の特別加算額
受給権者の生年月日 特別加算額
昭和9年4月2日~昭和15年4月1日 34,700円
昭和15年4月2日~昭和16年4月1日 69,300円
昭和16年4月2日~昭和17年4月1日 104,000円
昭和17年4月2日~昭和18年4月1日 138,600円
昭和18年4月2日以降 177,300円
出典:日本年金機構「加給年金額と振替加算」

例えば、加給年金の受給要件を満たしていて、配偶者が昭和17年4月3日生まれで子どもがいない場合、支給される金額は「234,800円+138,600円=373,400円」となります。

3.2 振替加算とは

振替加算とは、配偶者が65歳に到達することによって加給年金が終了する際に、代わりに配偶者の老齢基礎年金に対して上乗せされる年金のことです。

配偶者が加給年金額の対象者になっており加給年金の支給を受けている場合、配偶者が65歳になると要件を満たさなくなるため、加給年金が受け取れません。しかし配偶者が65歳以降に老齢基礎年金を受け取れる場合には、以下の要件を満たすことで老齢基礎年金に振替加算が上乗せされます。

【振替加算の受給要件】

  • 大正15年4月2日~昭和41年4月1日までの間に生まれている
  • 配偶者が退職共済年金・老齢厚生年金を受けているときは、厚生年金保険や共済組合などの加入期間を合計して240月未満であること
  • 配偶者の共済組合などに加入した期間を除いた厚生年金の35歳以降(夫は40歳以降)の加入期間が以下の表未満であること
振替加算の対象者
生年月日 加入期間
昭和22年4月1日以前 180月(15年)
昭和22年4月2日~昭和23年4月1日 192月(16年)
昭和23年4月2日~昭和24年4月1日 204月(17年)
昭和24年4月2日~昭和25年4月1日 216月(18年)
昭和25年4月2日~昭和26年4月1日 228月(19年)
出典:日本年金機構「加給年金額と振替加算」

振替加算の額は、昭和61年4月1日時点で59歳以上の人が234,100円であり、それ以降は年齢が若くなるにつれ減額されていく仕組みです。昭和61年4月1日に20歳未満の人は、振替加算の支給額が「0」になります。

4. 加給年金の申請方法は?

加給年金を請求するときは、厚生年金受給者や配偶者、子どもなどが要件を満たしているかを証明する書類が必要です。以下の書類に必要事項を記入して、最寄りの年金事務所や年金相談センターに提出します。

老齢厚生年金・退職共済年金・加給年金額加算開始事由該当届

年金が加算される人や、加算年金額の対象者(配偶者や子)についての情報(氏名や生年月日、マイナンバー等)を記入します。

受給権者の戸籍抄本や戸籍謄本

加給年金の対象者と受給権者の続柄を確認するために用いられます。年金受給権が発生する誕生日の前日以降で、提出日の6ヵ月以内に発行されたものを準備します。

世帯全員の住民票の写し

受給権者と加給年金の対象者との生計同一関係を確認するために必要です。住民の筆頭者や、世帯主、世帯員の続柄があるものを準備します。年金受給権が発生する誕生日の前日以降で、提出日の6ヵ月以内に発行されたものを準備します。

加給年金額の対象者の、所得証明書や非課税証明書のうちいずれか1つ

加給年金の対象者が受給権者によって生計が維持されているのかを確認するために必要です。加給年金の開始日に近い日付の書類を準備します。

5. 加給年金の注意点は?

加給年金は要件を満たしていても、請求しなければ支給されません。また要件を満たさなくなると支給が停止されますが、支給停止の際も手続きが必要です。

なお厚生年金を繰り下げ受給している間は受け取れないため、繰り下げ支給は慎重に検討しなければなりません。

5.1 請求しないと支給されない

加給年金は受給権者と加給年金の対象者が要件を満たせば、自動的に支給されるものではありません。受給するためには、最寄りの年金事務所か年金相談センターに必要書類の提出が必要です。

5.2 条件によっては停止される

離婚や別居などで加給年金の要件を満たさなくなった場合、加給年金は支給停止となります。しかし年齢要件以外の理由で配偶者や子どもが加給年金の対象者から外れた場合、自身で支給停止手続きをしなければなりません。

支給停止の手続きをせずに受け取ってしまった加給年金は、のちに返金する必要があります。

5.3 年金の繰り下げ受給をすると支給されない

厚生年金の繰り下げ受給をすると、繰り下げ期間中は加給年金が支給されません。

繰り下げ受給とは、原則65歳から受け取れる公的年金を65歳で受け取らず、66歳から75歳までの間に繰り下げることです。繰り下げ受給をすると、1ヵ月あたり0.7%増額できるメリットもありますが、繰り下げている期間中は加給年金が受け取れないため注意が必要です。

また繰り下げた年齢から加給年金を受け取った場合でも、加給年金が増額されることはありません。

6. まとめ

加給年金は厚生年金に20年以上加入していて、65歳未満の配偶者や18歳到達年度の末日までの子どもがいるときに受け取れる年金です。

配偶者が65歳になると受給権者の加給年金は支給停止となりますが、配偶者が振替加算を受け取れるようになります。

加給年金は要件を満たしていても申請しなければ支給されないため、必要書類を用意して、最寄りの年金事務所や年金相談センターに提出しましょう。

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