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リセッションとは?
意味や原因、影響、気を付けたいポイントなどを徹底解説!

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掲載日:2022年12月12日
最終更新日:2024年3月11日

最近、経済ニュースや記事などで「リセッション」の言葉を見聞きすることが多くなったと感じている人も多いのではないでしょうか。この記事では、リセッションとは何かを解説した上で、リセッションによって起きることや、知っておくべきことについて解説します。

この記事は6分で読めます!

1. リセッションとは?意味について理解しよう

最初に、リセッションという言葉の意味や、その定義について解説しましょう。

リセッションとは、景気後退局面のことを指します。景気は大きなサイクルで拡大と縮小を繰り返しています。景気の拡大がピークに達した時が景気の山で、逆に景気後退がピークになると谷と表現されます。リセッションは、景気の山から谷に向かっている局面のことを指すため、リセッションが始まった時よりもリセッションが終わる直前のほうが景気は悪いことになります。この概念を図にすると、以下のようになります。

リセッション(景気の強弱と時間の流れ)

景気サイクルは、景気拡大が続いてピークを迎えると、そのピークから今度は不景気になり、谷に向かっていきます。この赤色の部分のことをリセッションといいます。

1-1. リセッション(景気後退)を判断する指標は何?

リセッション(景気後退)を判断する指標は、主にDIとGDPの2つが挙げられます。

DI(Diffusion Index)
DIとは、さまざまな景気動向を指数化したものです。毎月内閣府によって公表され、50%を下回ると景気が悪化しているサインとなります。日本では、DIが50%を下回る状態が継続するとリセッション入りと判断されます。
GDP(Gross Domestic Product)
GDPとは「国内総生産」のことで、一定期間に国内で生産されたモノやサービスといった付加価値の合計額を指します。日本企業が海外支店で生産したモノやサービスの付加価値はGDPに含まれません。
欧米では四半期ごとに発表されるGDPが2四半期連続でマイナスになると、リセッション入りしたと判断されます。

1-2. アメリカのリセッションが世界中で注目される理由

アメリカは、GDPが世界一の経済大国です。アメリカの2022年度の名目GDPは25.46兆ドル、2位が中国で17.88兆ドル、3位は日本で4.23兆ドルです。

2022年度の名目GDPは1位がアメリカで25.46兆ドル、2位が中国で17.88兆ドル、3位は日本で4.23兆ドル、4位はドイツで4.08兆ドル、5位はインドで3.38兆ドル。

世界のGDPは90兆ドル前後とされているため、アメリカと中国が世界のGDPの大きな割合を占めていることがわかるでしょう。

また、世界をけん引する「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる企業は、すべてアメリカの企業です(アルファベット、アップル、メタ・プラットフォームズ、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、エヌビディア、テスラ)。つまり、アメリカでリセッションが起きれば、世界中の企業や投資家に悪影響がおよぶことになります。そのため、アメリカのリセッションは世界中で注目を集めるのです。

1-3. 景気減速と景気後退(リセッション)の違い

リセッションは景気後退局面のことですが、これと似た言葉に景気減速があります。この2つの言葉は異なる局面を示しているので、ここで違いを明らかにしておきましょう。景気後退は先ほど述べたように景気がピークを迎えて谷に向かう局面なので、全体的に不景気でさらに景気が悪化していく状態です。これに対して景気減速は、景気拡大の局面ではあるものの、その勢いが鈍化することをいいます。

2. リセッションの原因は?

それではなぜ、リセッションが起きるのでしょうか。これを理解するには、景気循環の仕組みを知る必要があります。先ほどの図でも示したように、景気は良くなったり悪くなったりを大きなサイクルで繰り返す仕組みです。
企業が商品やサービスを提供するとモノが売れ、利益が増えると企業は設備投資や雇用、賃金アップにお金を使うようになります。従業員の賃金も上昇するため、消費につながり、さらに企業の売上や利益が増加するという好循環が生まれます。

しかし、こうした好循環はいつまでも続くものではありません。いずれ需要が頭打ちになり、期待しているようにモノが売れなくなります。モノが売れなくなると企業は利益が減るため、事業を縮小したり、従業員の給与削減やリストラをしたりするようになります。
この状態に陥ると消費が抑制され、企業のモノやサービスが売れなくなるという悪循環が生まれます。こうした悪循環が多くの企業に波及すると、いずれリセッションに陥るという仕組みです。

また、上記のサイクルだけでなく、国の中央銀行の金融政策もリセッションの要因になることがあります。国の景気が良くなり需要が加熱すると、物価が上昇するため、過度な物価上昇を抑えるために中央銀行は政策金利を引き上げます。政策金利を引き上げると企業は金利が高くなるため、お金を借りにくくなり、設備投資を控える傾向があります。結果的に企業の売上や利益の低下、従業員の賃金低下、消費の低迷、物価の低迷が連鎖的に発生し、最終的にリセッションを迎えます。

リセッションになると、今度は中央銀行が政策金利を引き下げて、企業の投資意欲を促進し、再度景気回復を目指します。
なお、景気には主に4つのサイクルがあるといわれています。

主な景気サイクル
景気循環 周期 要因 発見・解明者
キチンの波 40ヵ月 企業の在庫投資の増減 キチン(アメリカの経済学者)
ジュグラーの波 10年 設備投資の増減 ジュグラー(フランスの経済学者)
クズネッツの波 20年 建築物の需要 クズネッツ(アメリカの経済学者)
コンドラチェフの波 50年 技術革新 コンドラチェフ(ロシアの経済学者)

キチンの波とは40ヵ月サイクルの最も短い景気循環のことで、企業が在庫を調整する動きなどに着目した波です。

ジュグラーの波は10年前後のスパンで循環する中期的な景気サイクルで、老朽化した設備や機械を買い替える設備投資などの需要を軸にして循環する景気の波を指します。

クズネッツの波は20年周期の長期的な景気サイクルで、建築物の建て替えや改修への需要によって発生する波です。

コンドラチェフの波は50年周期の景気サイクルで、技術的な進歩やインフラの更新といった大規模な波のことです。

3. リセッションの過去事例と株価に与えた影響

過去には、大きなリセッションを迎えた局面がいくつかあります。ここでは、代表的なリセッションの局面を3つ紹介します。

3-1. ブラックマンデー

ブラックマンデーとは、1987年10月19日月曜日に起こったニューヨーク株式市場の大暴落のことです。当時アメリカは財政赤字と貿易赤字の「双子の赤字」という問題を抱えており、当時の大統領であったレーガン大統領は「レーガノミクス」という財政再建策を掲げました。

当時の西ドイツ、フランス、日本、英国を含めた5ヵ国で「プラザ合意」というドル安誘導の話し合いが行われました。しかしドル安は止まらず、各国の協調に乱れが生じました。協調政策は破綻したのではないかという不安が世界の投資家に波及したことによりニューヨーク市場の株式が暴落し、これをきっかけに世界中の株安を引き起こしました。ブラックマンデーは、過去最大規模の暴落といわれています。

3-2. リーマンショック

リーマンショックとは、2008年9月15日にアメリカの投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻したことを機に、世界中に広がった金融危機のことです。

米政府が提供した低所得者を対象とした高金利の住宅ローン「サブプライムローン」は、2004年ころから不動産ブームを背景に急速に普及していました。サブプライムローンは最初の数年間は金利が低くなる仕組みで、金利が上昇したころに不動産を売却して返済することを前提に販売されていました。サブプライムローンは複雑に証券化され、さまざまな金融機関に購入されていましたが、中でも多く購入していたのが「リーマン・ブラザーズ」です。

しかし、やがて不動産価格が下落し、多くのサブプライムローンが不良債権となってしまい、サブプライムローンを大量に保有していたリーマン・ブラザーズは経営破綻に陥りました。その影響は全世界に拡大し、日経平均株価も1ヵ月で約50%下落するほどの影響を受けました。

3-3. コロナショック

2019年に中国で発生した新型コロナウイルスが世界中に広がり、経済活動の停滞を引き起こしました。新型コロナウイルスの爆発的な感染により世界各国でロックダウンを実施したことで、企業活動が大幅に制限を受け、世界中でリセッションが起こりました。

また、当時の米大統領だったトランプ大統領が「新型コロナウイルスによる混乱が夏まで続く可能性がある」という発言を受け、アメリカの主要な経済指標であるNYダウが過去最大2,997ドル安となりました。これはブラックマンデーに次ぐ過去2番目の下げ幅です。

コロナショックも、ブラックマンデーやリーマンショックに匹敵するリセッションの局面としてよく用いられる事例です。

4. リセッションを回避するためのシグナルはある?

リセッションを回避するシグナルをキャッチするためには、やはりアメリカの経済指標に注目する必要があります。特に世界中の投資家が注目しているのは、「FOMC」と「米国雇用統計」です。FOMC(連邦公開市場委員会)とは、アメリカの政策金利を決める会合のことです。FOMCが政策金利引き上げを発表すれば、景気を引き締めていることになるため、リセッションに向かう可能性が高いでしょう。

また、FOMC後に発表されるFRB議長の発言にも注目です。FRB議長が今のアメリカの景気や経済情勢についてどう見ているかが理解できます。
さらに、FOMCによる金融政策がうまくいっているかどうかをその他の経済指標で確認することも大切です。確認できる経済指標の1つが米国雇用統計です。仮に米国雇用統計の失業率が前回発表された数値を上回っていれば、リセッションにより雇用が減退していることがわかります。

加えて、平均時給が前年や前月比を下回っていれば、政策金利の引き上げが功を奏して、リセッションにより賃金が下がっていることがわかります。
ISM製造業指数も重要な経済指標です。ISM製造業指数とは全米供給管理協会(ISM)が公表するアメリカ製造業の景況感を示す指数のことで、50%を超えるとアメリカの製造業が好調、50%を下回ると不調と判断します。

ただし、これらの兆候は1回、2回で判断するのではなく、長期的に見ていかなければ確実にリセッションになっているかどうかの判断は難しいでしょう。
また、短期金利が長期金利を上回る「逆イールド」も、リセッションを示すサインといわれています。一般的に債券は、残存期間が長いほど利回りが高くなり、短いほど利回りが低くなります。
仮に中央銀行が景気を引き締めようと政策金利を引き上げた場合、債券市場は1〜3年かけて利上げをすることにより短期の債券利回りが上がりやすくなるものの、長期的には景気が減速することから、長期債券の利回りが上がりにくくなり、逆イールドが起こります。

リセッションはこのような数値を定期的に確認して、早めに兆候をつかむことが大切です。

5. 今後の景気について

内閣府は、今後の景気について2022年の年初にポジティブな見通しを立てていました。2022年1月17日に閣議決定された「令和4年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」によると、日本の実質GDPは3.2%程度の成長が見込まれており、GDPの規模が過去最高となるほか、景況感がコロナショック以前の水準に回復して景気が拡大していく可能性が高いとしていました。ところが、2022年10月には国際通貨基金(IMF)が世界経済の見通しを下方修正し、アメリカではリセッション入りする見通しが強まってきました。こうした全体の景気動向を踏まえると、年初からの潮目が変わってきていることに注意を払う必要がありそうです。

6. リセッションへの備えや気を付けたいポイント

リセッションが現実になると仮定した場合、投資している人はリセッションに備える必要があります。そのポイントは、6つです。

① 株価は先行指数であることを踏まえ、自分で景気動向に注視する

株価は半年以上先を織り込むといわれる先行指数です。株価が下落基調になることは、リセッションのシグナルである可能性が高いです。ただし、あくまでも先行指数として半年以上先を織り込んでいるだけかもしれないため、本当にリセッション入りしているのかどうかはDIやGDPなどの指標をチェックしつつ自分で注視しておく姿勢が重要です。

② 分散投資を実践する

リセッションになると、株のように積極的にリスクを取る資産よりも、国債や金(ゴールド)といった安全資産が有利になります。株だけに投資をするのではなく安全資産も組み込んで保有資産を多様化させることは有効な「守り」になります。

③ ディフェンシブ銘柄への投資

ディフェンシブ銘柄とは、株の銘柄の中でも「衣食住」や社会インフラなどに関わる企業で、景気変動による影響を受けにくい銘柄群のことです。株式投資をしていく中で資産を多様化するのであれば、リセッションになっても株価が大きく下落する可能性の低い電力、ガス、通信、交通といった銘柄を保有することが備えになります。

④ 金や原油などコモディティへ投資する

リセッション局面において、かつては債券投資が有効といわれていましたが、近年では株式と債券の値動きが同調するケースが増加している傾向があります。

近年は世界各地で地政学リスクが高まっていることから、金や原油といったコモディティ投資が有効です。金や原油もリセッションとの相関はあるものの、地政学リスク時に有効な投資先といわれています。ただし、金利や配当金といったインカムゲインがない点には留意する必要があります。

⑤ 現物資産である不動産に投資する

不動産価格は株式ほど大きな値下がりをしないため、リセッション時に強い資産といわれています。また不動産投資は多くの場合、入居者から毎月支払われる家賃が収入源であることから、不動産価格の変動をあまり意識する必要がない投資方法といえるでしょう。

また、デフレになったからといって、急激に家賃収入が低下するケースもあまりありません。ただし、家賃収入の下落リスクはゼロではない点に注意しましょう。

⑥ 分散投資を実践する

分散投資とは、株式や債券、不動産など値動きの特徴が異なる投資先に対して分割して投資をする投資手法です。たとえば、株式のみを保有していると、株式相場が暴落したときに大きな損失を被りますが、債券も併せて保有していれば株式相場が暴落したときの下落リスクは回避できます。

また、投資先を分散させるだけでなく、購入時期を分散させる方法もあります。購入時期を分散させて投資することを「ドルコスト平均法」と呼び、毎週1万円や毎月2万円など一定期間ごとに一定額、同じ投資商品を買い付けます。

値動きをする投資商品はドルコスト平均法を使って購入することで、購入単価が平準化され、投資のリスクを低減させることが可能です。

7. まとめ

リセッションとは、景気後退局面のことで、株価の下落が懸念されます。しかし、リセッションからの回復に期待した株の「買い場」ともなり得ます。特に、コロナショックは金融市場の破綻が原因ではなく、パンデミックが原因であったため、買い場であると考えた投資家も多くいたようです。

今後は景気動向を注視しつつ、世界経済に影響をもたらすアメリカの金融政策にも目を向けたり、リセッションへの備えをしたりしながら、投資戦略を立てていくことが大切です。

以上

【ライター情報】
金子賢司

東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、金融に興味を持ち、資産運用やローンなどの勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。
<保有資格>CFP

東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、金融に興味を持ち、資産運用やローンなどの勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。
<保有資格>CFP

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