扶養控除とは?控除金額や配偶者控除との違いなどを分かりやすく解説
- #社会保険
掲載日:2024年2月27日
家族のなかに扶養親族がいれば、扶養控除が受けられ、所得税や住民税を削減できる可能性があります。ただし、すべての扶養親族が扶養控除の対象になるわけではありません。
この記事では、そもそも扶養控除とは何なのか、さらに、扶養控除を受けるための条件や扶養控除の金額、手続き方法について解説します。
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1. 扶養控除とは
扶養控除とは、一定の要件を満たした扶養親族がいる場合に受けられる所得控除のことです。納税をしている人は、扶養控除を含めた控除額が多くなるほど、所得税や住民税を抑えられる可能性があります。
扶養は、大きく「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」に分けられます。税法上の扶養とは、収入が少ない配偶者や子どもなどに対して納税者が経済的に援助することです。
扶養をすることによって配偶者控除や扶養控除が受けられるため、経済的に援助している納税者の税負担が軽減されることがあります。なお、本記事で紹介するのは、税法上の扶養に関する内容です。
また、社会保険上の扶養とは、お勤めの人など社会保険に加入している人の被扶養者になることを指します。社会保険加入者の被保険者になると、扶養者と同じ社会保険に加入できることに加え、被扶養者の社会保険料の負担がなくなります。
2. 扶養控除を受けるための条件
前述のとおり、扶養控除を受けるためには一定の要件を満たした扶養親族がいる必要があります。扶養親族とは、納税者によって経済的援助を受けている配偶者以外の親族のことです。税法上の扶養と認められるためには、その年の12月31日時点で以下の4つの条件を満たす必要があります。
- 配偶者以外の6親等内の血族および3親等内の姻族
- 納税者と生計を一つにしている
- 年間合計所得金額が48万円以下(給与所得のみの場合は103万円以下)
- 青色申告の事業専従者として給与を受けていない、または白色申告の事業専従者ではない
血族とは同じ祖先を持つ血縁関係のこと、姻族とは婚姻によってできた親族関係のことです。「生計を一つにする」とは、別居同居を問わず、家族と生活費を共有している状態を指し、仕送りなどで生計を維持している状態も含まれます。また、入院中の親族に療養費を支払っていたり、離婚後の子どもの養育費を支払っていたりするケースも該当します。なお、同一人物が別々の人の扶養親族になることはできないため注意が必要です。
ちなみに、税法上の扶養と社会保険上の扶養は異なります。社会保険上の扶養の条件は、扶養者と別居していても受けられるケースと(同居要件なし)、同居していないと受けられないケース(同居要件あり)に分けられます。
【同居要件なしのケース】
以下に該当する親族で、年間収入が130万円未満かつ扶養者の年間収入よりも少ない人が対象
- 扶養者の直系尊属
- 配偶者(事実上の婚姻関係も含む)
- 子・孫・兄弟姉妹
【同居要件ありのケース】
以下に該当する親族で、年間収入が130万円未満、かつ扶養者の年間収入の2分の1未満の人が対象
- 【同居要件なしのケース】に該当しない、扶養者の3親等以内の親族
- 事実上の婚姻関係にある配偶者の両親および子ども
3. 扶養控除の金額
扶養控除を受けられるのは、扶養親族のうちその年の12月31日時点で16歳以上の人が対象です。扶養控除の対象となる親族のことを「控除対象扶養親族」といいます。
区分 | 控除額 | |
---|---|---|
一般の控除対象扶養親族※1 | 380,000円 | |
特定扶養親族※2 | 630,000円 | |
老人扶養親族※3 | 同居老親等以外の者 | 480,000円 |
同居老親等※4 | 580,000円 |
- ※1その年の12月31日現在の年齢が16歳以上の人をいいます。
- ※2その年の12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の人をいいます。
- ※3その年の12月31日現在の年齢が70歳以上の人をいいます。
- ※4老人扶養親族のうち、納税者又はその配偶者の直系の尊属(父母・祖父母など)で、納税者又はその配偶者と同居を常としている人をいいます。
また、控除対象扶養親族のうち19歳以上23歳未満の人を「特定扶養親族」、70歳以上の人を「老人扶養親族」、老人扶養親族のうち納税者または配偶者の直系の尊属(父母・祖父母)で、納税者あるいはその配偶者と同居している人を「同居老親等」、それ以外を「同居老親等以外の者」といいます。
実際に、扶養控除を受けた場合どのくらい所得税や住民税の負担が軽減するかについて、納税者の所得税率が20.0%で、19歳の扶養親族がいるケースで見てみましょう。
扶養親族の年齢が19歳であることから「特定扶養親族」に該当し、所得税の扶養控除額は63万円、住民税の扶養控除額は45万円となります。
【所得税】
扶養控除額63万円×所得税率20.0%=12.6万円
【住民税】
扶養控除額45万円×住民税率10.0%=4.5万円
扶養控除を受けることで、所得税・住民税あわせて年間17.1万円の負担が軽減されます。
4. 扶養控除を受けるために必要な手続きは?
扶養控除を受けるには、会社員は年末調整で申告し、個人事業主などは確定申告が必要です。
年末調整とは、毎月給与から源泉徴収される税金の年間合計額と実際の納税額を一致させる手続きを指します。計算の結果、源泉徴収した金額の方が多ければ、税額が還付され、不足していれば徴収されます。
また、確定申告とは1月1日から12月31日の1年間に生じた所得から税額を計算し、国に申告・納税まで済ませる手続きのことです。扶養控除を受けるための手続きについて、年末調整で申告するケースと確定申告のケースに分けて紹介します。
4.1 年末調整で申告する
会社員の場合は、基本的に年末調整で扶養控除を受けられます。年末調整は一般的に10月から翌年1月にかけて手続きが行われ、時期が近くなると担当部署から「給与所得者の扶養控除等申告書」という書類が配布されます。
控除を受ける人(給与を受け取る人)や控除対象扶養親族となる人の氏名や続柄、個人番号、住所といった情報を記載して、担当部署に提出します。
4.2 確定申告で申告する
個人事業主の場合は、確定申告時に扶養控除の手続きを行います。確定申告は、1年間で得た所得に対して翌年の2月中旬から3月中旬にかけて行うのが基本です。確定申告書第二表「配偶者や親族に関する事項」欄に個人番号や続柄、生年月日などの情報を記入し、適用できる扶養控除額の合計を確定申告書第一表の「扶養控除」の欄に記載します。
5. 扶養控除と配偶者控除の違い
扶養控除は、配偶者を除いた所定の要件を満たした扶養親族がいる場合に、納税者の所得から控除できるというものです。
一方、配偶者控除は配偶者のみを対象とした控除です。配偶者がパートやアルバイトの場合、給与収入が150万円になるまで48万円の配偶者控除が受けられます。
給与収入が150万円を超えると、配偶者控除がなくなる代わりに配偶者特別控除が受けられます。配偶者特別控除は、配偶者の年収に応じて段階的に減少し、201万円を超えるとゼロになる仕組みです。詳しくは「「年収の壁」とは?政府の対策で何が変わるの?分かりやすく解説!」の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。
また、納税者の収入が900万円を超えた場合、配偶者控除、配偶者特別控除が段階的に減少し、1,000万円を超えるとゼロになります。なお、扶養控除には納税者の収入要件はありません。
配偶者控除は、年末調整で申告する場合の書類も、扶養控除とは異なり「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」という書類に記入します。記入後に担当部署に提出する点は扶養控除と同じです。
確定申告をするときは、配偶者の情報も扶養控除と同様、第二表の「配偶者や親族に関する事項」欄に記載しますが、第一表では配偶者控除の欄に控除額を記入します。
6. まとめ
家族に「控除対象扶養親族」がいると、納税者が扶養控除を受けられ、所得税や住民税の負担を軽減できる可能性があります。扶養控除額は扶養に入る人との関係性によって変動するため、誰かを扶養に入れる際は事前にどこに区分されるのか確認しておきましょう。
ただし、控除対象扶養親族がいても手続きをしなければ扶養控除は受けられません。会社員は年末調整、個人事業主は確定申告の際に忘れずに手続きを済ませましょう。
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