扶養控除とは?配偶者控除との違いや「103万円の壁」などを分かりやすく解説
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掲載日:2024年2月27日
最終更新日:2025年5月16日

家族のなかに扶養親族がいれば、扶養控除が受けられ、所得税や住民税を削減できる可能性があります。ただし、すべての扶養親族が扶養控除の対象になるわけではありません。
この記事では、そもそも扶養控除とは何か、さらに、扶養控除を受けるための条件や受けられる控除額、手続き方法について解説します。
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1. 扶養控除とは
扶養控除とは、一定の要件を満たした扶養親族がいる場合に受けられる所得控除のことです。納税をしている人は、扶養控除を含めた控除額が多くなるほど、所得税や住民税を抑えられる可能性があります。これは、控除によって税額を計算するときの基になる課税所得が減る仕組みになっているためです。
扶養は、大きく「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」に分けられます。税法上の扶養とは、収入が少ない配偶者や子どもなどに対して納税者が経済的に援助することです。
具体的には、扶養される方の年間合計所得金額が48万円以下(給与収入のみの場合は103万円以下)である場合に、扶養親族として認められる可能性があります。逆に、これらの収入基準を超えると扶養親族として認められないため、扶養控除は適用されず自身で税金を納める必要があります。
扶養をすることによって配偶者控除や扶養控除が受けられるため、経済的に援助している納税者の税負担が軽減されることがあります。なお、本記事で紹介するのは、税法上の扶養に関する内容です。
一方、社会保険上の扶養とは、お勤めの人など社会保険に加入している人の被扶養者になることを指します。社会保険加入者の被保険者になると、扶養者と同じ社会保険に加入できることに加え、被扶養者の社会保険料は不要です。
社会保険上の扶養は、税法上の扶養とは別の基準で判断されるため、両者を混同しないよう注意が必要です。
2. 扶養控除を受けるための条件
前述のとおり、扶養控除を受けるためには一定の要件を満たした扶養親族がいる必要があります。扶養親族とは、納税者によって経済的援助を受けている配偶者以外の親族のことです。税法上の扶養と認められるためには、その年の12月31日時点で以下の4つの条件を満たす必要があります。
- 配偶者以外の6親等内の血族および3親等内の姻族
- 納税者と生計を一つにしている
- 年間合計所得金額が48万円以下(給与所得のみの場合は103万円以下)
- 青色申告の事業専従者として給与を受けていない、または白色申告の事業専従者ではない
血族とは同じ祖先を持つ血縁関係のこと、姻族とは婚姻によってできた親族関係のことです。「生計を一つにする」とは、別居同居を問わず、家族と生活費を共有している状態を指し、仕送りなどで生計を維持している状態も含まれます。たとえば、入院中の親族に療養費を支払っていたり、離婚後の子どもの養育費を支払っていたりするケースも該当します。なお、同一人物が別々の人の扶養親族になることはできないため注意が必要です。
また、「年間合計所得金額48万円以下」という基準は「年間の所得」であり、「年間の収入」とは異なります。収入とは、会社やパート・アルバイト先などから受け取る給与の総額のことで、所得とはそこから給与所得控除などの控除や必要経費を差し引いた金額のことです。
たとえば、パートやアルバイトで給与収入が年間103万円以下の場合、給与所得控除(最低55万円)を差し引くと、所得が48万円以下となるため扶養親族に該当する可能性があります。一方、公的年金や事業所得などがある場合は、それぞれ公的年金等控除や必要経費を差し引いたうえで所得を計算します。
なお、社会保険上の扶養の条件は、扶養者と別居していても受けられるケース(同居要件なし)と、同居していないと受けられないケース(同居要件あり)に分けられます。
【同居要件なしのケース】
以下に該当する親族で、年間収入が130万円未満かつ扶養者の年間収入よりも少ない人が対象
- 扶養者の直系尊属
- 配偶者(事実上の婚姻関係も含む)
- 子・孫・兄弟姉妹
【同居要件ありのケース】
以下に該当する親族で、年間収入が130万円未満、かつ扶養者の年間収入の2分の1未満の人が対象
- 【同居要件なしのケース】に該当しない、扶養者の3親等以内の親族
- 事実上の婚姻関係にある配偶者の両親および子ども
3. 扶養控除の金額
扶養控除を受けられるのは、その年の12月31日時点で16歳以上の人が対象です。これを控除対象扶養親族といい、年齢や同居の有無によって控除額が異なります。
区分 | 控除額 | |
---|---|---|
一般の控除対象扶養親族※1 | 380,000円 | |
特定扶養親族※2 | 630,000円 | |
老人扶養親族※3 | 同居老親等以外の者 | 480,000円 |
同居老親等※4 | 580,000円 |
- ※1その年の12月31日現在の年齢が16歳以上の人をいいます。
- ※2その年の12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の人をいいます。
- ※3その年の12月31日現在の年齢が70歳以上の人をいいます。
- ※4老人扶養親族のうち、納税者又はその配偶者の直系の尊属(父母・祖父母など)で、納税者又はその配偶者と同居を常としている人をいいます。
16歳未満(12月31日時点で15歳以下)の子どもは児童手当の支給対象となっているため、扶養控除の対象外です。また、16歳以上であれば、扶養控除を受けられる上限の年齢はありません。さらに19歳以上23歳未満の「特定扶養親族」、70歳以上の「老人扶養親族」は、控除額が加算されます。そのなかでも同居老親等の場合は、控除額が高く設定されています。
ただし、「同居」とみなすかどうかは事例によって異なります。病気やケガで長期入院している場合は同居として扱われることが多い一方、老人ホームや福祉施設に入所して住民票も施設に移している場合は「別居」とみなされる可能性があります。
では、実際に扶養控除を受けた場合、どのくらい所得税や住民税の負担が軽減するかについて、納税者の所得税率20.0%で、19歳の扶養親族がいるケースで見てみましょう。
扶養親族の年齢が19歳であることから「特定扶養親族」に該当し、所得税の扶養控除額は63万円、住民税の扶養控除額は45万円となります。
【所得税】
扶養控除額63万円×所得税率20.0%=12.6万円
【住民税】
扶養控除額45万円×住民税率10.0%=4.5万円
扶養控除を受けることで、所得税・住民税あわせて年間17.1万円の負担が軽減されます。
4. 扶養控除Q&A
ここでは、扶養控除に関するよくある質問と回答を紹介します。
4.1 扶養控除と配偶者控除は同じ?
扶養控除は「配偶者以外」の家族を対象とした所得控除で、配偶者控除は配偶者の収入が一定額以下の場合に受けられる制度です。いずれも納税者の税負担を軽減する仕組みですが、控除の対象や条件が異なります。
4.2 「103万円の壁」とは?106万円・130万円と何が違う?
「103万円の壁」とは、パートやアルバイトの年間給与収入が103万円を超えると所得税が発生し、配偶者控除や扶養控除の対象外となる目安のことです。一方、106万円や130万円は社会保険の加入判定基準で、収入がこれらを超えると本人が保険料を負担する必要が出てきます。
年収の壁について詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
4.3 扶養控除を受けるために必要な手続きは?
会社員であれば、年末調整で「扶養控除等申告書」を提出し、扶養親族の状況を申告します。個人事業主や会社員で年末調整だけでは控除を反映しきれない場合は、確定申告で扶養親族の情報を記入して控除を受けます。これらの手続きがないと控除は適用されないため注意が必要です。
5. まとめ
家族に「控除対象扶養親族」がいると、納税者は扶養控除を受けることで所得税や住民税の負担を軽減できる可能性があります。扶養控除額は家族との続柄や年齢などによって変わるため、条件や対象を事前に確認しておくことが大切です。
ただし、控除対象扶養親族がいても、会社員は年末調整、個人事業主は確定申告などで適切な手続きをしなければ扶養控除は受けられません。方法や仕組みを理解して、スムーズに手続きを済ませましょう。
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