ESGとは?意味やSDGsとの違い、ESG経営、ESG投資についても解説
- #時事
掲載日:2024年6月10日
近年、投資の判断基準として企業のESGに対する取り組みを重視する投資家が増えています。この記事では、ESGの意味やSDGs、CSR、SRIとの違いなどについて詳しく解説します。ESG経営やESG投資に関する基本的な内容についても紹介するので、ESGについて詳しく知りたい人はぜひ最後までご覧ください。
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1. ESGとは
ESGとは「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(統治)」の頭文字を取った言葉で、これらを考慮した投資活動や経営・事業活動 のことを指します。
これまで多くの企業や個人が事業を営み、利益を追求してきましたが、短期的な利益を追求するあまり、地球温暖化や異常気象、人権問題といった社会問題が顕在化しています。そのため、長期的な成長を目指す企業にとって、環境問題や社会問題解決につながるESGを意識した経営は不可欠なものになりつつあります。
まずは「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(統治)」それぞれに関する課題と具体的な解決策について詳しく見ていきましょう。
1.1 Environment(環境)
「Environment(環境)」における課題としては、人類が経済的な豊かさや利便性を追求するあまり、気候変動や資源枯渇、廃棄物、汚染、森林破壊など、環境に関する多くの問題を引き起こしたことです。
こうした課題を解決するために、ESG経営の一環として温室効果ガスの削減や再生エネルギーの活用、廃棄物のリサイクル、省エネ効率の向上などの取り組みが推進されています。
1.2 Social(社会)
「Social(社会)」における課題としては、過重労働やセクハラ、パワハラ、ジェンダー不平等、非正規労働者への待遇格差などが挙げられます。海外にサプライチェーンを持つ企業においては、その過程で強制労働などの人権問題が関わっている可能性もあるでしょう。
また、誤解を招く広告や消費者の安全を脅かす商品・サービスの提供なども、社会要因に含まれます。
こうした課題を解決するために、適正な労働条件の遵守や多様性の尊重、ハラスメントの禁止、誠実な広告表示、安心・安全なサービスの提供などが求められます。
1.3 Governance(統治)
「Governance(統治)」における課題としては、企業における不透明な取締役会の意思決定や不正会計、不祥事の隠ぺいなどが挙げられます。
具体的な取り組みとして、社外取締役における独立性の担保や情報開示、利益相反の管理といった企業が健全な経営を行うための自己管理体制の構築が挙げられます。
2. ESGが重視されるようになった理由
今まで投資家は、業績や財務分析で投資判断を行っていました。しかし、2006年に当時国際連合事務総長であったコフィー・アナン氏が機関投資家の責任ある投資を推進するために策定した「PRI(責任投資原則)」の中で、投資と企業経営においてESGに考慮すべきと示されたことをきっかけに、ESGが重要視されるようになりました。
また日本では、日本を代表する機関投資家「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」がPRI(責任投資原則)に署名したことを機に、日本全体の機関投資家にESGを重視する動きが広がっていきました。
3. ESGと似た用語との違い
ESGと混同しやすく、比較的関連性のある言葉として「SDGs」「CSR」「SRI」があります。ここでは、それぞれの意味やESGとの違いを解説します。
3.1 ESGとSDGsの違い
SDGsとは「Sustainable Development Goals」の頭文字を取った言葉で、「持続可能な開発目標」と訳します。SDGsは、2030年までに世界をより良い方向へ導くために、2015年9月に国連サミットで採択された行動指針です。
一方でESGは、投資や企業経営をする上で考慮すべき行動指針の1つであり、企業は自社の長期的な成長と投資家からの資金調達を目的としてESGに取り組んでいます。
3.2 ESGとCSRの違い
CSRとは「Corporate Social Responsibility」の頭文字を取った言葉で、「企業の社会的責任」と訳します。企業は自社の利益ばかりではなく、従業員や消費者、投資家への配慮から社会貢献といった社会全体の利益までも考慮する必要があるという考え方です。
CSR・ESGいずれも環境や社会に配慮する点では共通しています。ただし、CSRはあくまでも環境や社会の課題の解決や社会貢献は経営活動に付随したものであるのに対し、ESGは環境や社会の課題の解決が経営課題の中心とする考えであるという点が大きな違いとなります。
3.3 ESGとSRIの違い
SRIとは「Socially Responsible Investment」の頭文字を取った言葉で、「社会的責任投資」と訳します。SRIの始まりは、キリスト教的倫理の観点から社会、あるいは環境に対する基準を満たさない武器やギャンブル、タバコといったセクターを投資対象から排除するという考え方です。1920年代に始まった概念といわれています。
SRIはもともと宗教的な価値観から派生しているため、特定の投資家だけが行う投資手法であると考えられる傾向にあります。一方で、ESGは社会全体を取り巻く問題・課題であり、特定の人ではなくすべての人に関わります。
4. 企業におけるESG経営とは
ESGを重視する経営手法を「ESG経営」といいます。ESG経営により、目先の利益や評価に捉われずに環境や社会に配慮しながら健全な管理体制を構築することで、企業の評価が高まり、投資を呼び込む効果が期待できます。
5. ESG投資とは
適切なESG経営をしている企業へ投資することを「ESG投資」といいます。ESG投資は、企業がESG経営を通して社会問題を解決しながら、成長することが期待できるというメリットがあります。一方で、短期的な運用には向いていないというデメリットもあります。
ここでは、ESG投資のメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。
5.1 ESG投資のメリット
ESG経営は長期的な視点で取り組むため、長期的かつ安定的な投資計画が立てられます。
また、日ごろからESG経営を実践している企業であれば、事業環境の悪化リスクや倫理的問題などにも対応しやすいため、リスク軽減や社会貢献につながるといったメリットがあります。
5.1.1 安定的・長期的な運用が期待できる
ESGに取り組むことで、企業は間接的に持続可能なビジネスモデルが構築できます。そのため、ESG投資をすれば、長期的・安定的な利益が期待できるでしょう。
また、ESG関連の技術は需要が高いため、ESG関連技術を提供している企業を選んで投資することで、利益が得られる可能性があります。
5.1.2 事業環境悪化リスク・その他倫理的問題等のリスクが少ない
ESGに取り組んでいない企業は、今後脱炭素化に向けた法改正など、持続可能な社会を実現するための規制が強化されることで、業績が悪化するかもしれません。
一方、ESGに積極的に取り組んでいる企業であれば、こうした変化による事業環境悪化や、倫理的問題で社会から批判を受けるリスクは少ないでしょう。
5.1.3 持続可能な社会の開発に貢献できる
環境問題や社会問題に取り組む企業に投資をすることで、間接的に持続可能な社会の実現に貢献できます。また、投資を通じて環境問題や社会問題に貢献することで、精神的な充足感を得られるでしょう。
5.2 ESG投資のデメリット
ESG投資は長期運用に向いている反面、短期運用には不向きです。また、ESG経営の実績は開示情報が少なく、数値化されていない取り組みもあることから、投資先を選定することが難しく、手間がかかるケースも少なくありません。
ここでは、ESG投資のデメリットについて詳しく見ていきましょう。
5.2.1 短期的な運用には向かない
ESG投資は業績や財務分析だけでなく、企業として持続可能な社会の実現への取り組みも評価して投資をするため、短期的なリターンは期待できない可能性があります。
また、ESG経営をするには金銭コストや人的コストがかかるため、一時的に利益が低迷する要因となるかもしれません。短期間で成果を得ることを目的としている場合は、ESG投資は向いていないことを覚えておきましょう。
5.2.2 選定の手間がかかる
ESG経営への取り組みは利益や財務情報だけでは判断ができません。開示情報も少ないため、成果を確認するためにはさまざまな分析方法や専門知識を要するため、ESG投資は投資初心者にとってハードルが高い投資手法といえるでしょう。
5.2.3 グリーンウォッシング企業に注意しなければならない
グリーンウォッシングとは、環境に配慮していることを想起させる「グリーン」と、ごまかし・上辺だけという意味がある「ホワイトウォッシュ」を組み合わせた造語です。つまり、表面的に環境問題や社会問題に取り組んでいると見せかけていることを意味し、そのような企業を「グリーンウォッシング企業」といいます。
たとえば、ESG投資を謳っている投資信託であるにもかかわらず、実際に投資銘柄を見ると温室効果ガスの排出量が多い企業が含まれているようなケースです。
そのため、投資信託を通じてESG投資をするときは、事前に投資先を確認するようにしましょう。ESG指数と連動した運用成果を目指すETF(上場投資信託)に投資をするのも1つの方法です。
6. まとめ
長期的な成長を目指す企業にとって、ESGを意識した経営は必要不可欠なものになりつつあります。
また、ESGを重視する経営手法を指すESG経営を行っている企業に投資するESG投資は、長期的・安定的な利益が期待できる反面、短期的なリターンは期待できません。グリーンウォッシング企業に投資してしまう可能性もあるため、注意が必要です。
ESG投資は多くの投資家が注目している投資手法ですが、投資をするときはメリット・デメリットを十分に確認しておきましょう。
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