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【2025年度版】大学無償化制度のポイント、支援内容を解説

  • #時事

掲載日:2025年2月17日

「子どもを大学に進学させたいけれど経済的に難しい」と悩む人もいるでしょう。このような人を支援するために国が実施した政策が「大学無償化」です。活用すれば、経済的に子どもを進学させるのが難しい人でも、進学できる可能性があります。ただし、2025年4月からの変更箇所や対象となる条件などがあるため、利用する前に理解しておくことが大切です。

この記事では、大学無償化の概要や2025年4月からの変更点について詳しく解説します。手続き方法についても説明するため、大学無償化制度の利用を検討している人はぜひ参考にしてください。

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1. 大学無償化とは?

大学無償化とは、経済的な理由によって大学・専門学校への進学が制限される人に向けて、授業料や入学料の免除もしくは補助する制度のことです。正式には「高等教育の修学支援新制度」といいます。大学無償化は授業料・入学金の免除または補助する「授業料等減免制度」と、返還不要の「給付型奨学金」の2つで構成されており、より多くの人が大学や専門学校への進学ができることを目的として2020年4月から始まった制度です。

2020年に実施された大学無償化では、世帯収入や資産などの要件を満たすことに加えて、学ぶ意欲のある学生のみに限られていました。その後2024年4月に制度が改正され、子育て支援などの観点から、扶養する子が3人以上である多子世帯と理工農系の学部に在籍している、中間層に支援が拡大されています。さらに2025年度以降は、多子世帯であれば所得制限なしで支援の対象となります。

2. 多子世帯が対象? 2025年大学無償化のポイント

大学無償化は、2025年4月より多子世帯であれば所得制限なしで支援を受けられるように改正されました。しかし、大学無償化を受けるにはいくつかの要件を満たす必要があります。ここからは、具体的な対象者や無償化の要件について見ていきましょう。

2.1 2025年4月入学生が対象

2025年からの多子世帯への大学無償化は、2025年4月に入学する人が対象です。また2025年(令和7年)4月時点で前年度から在学中の人も対象となります。

2.2 扶養する子が3人以上の多子世帯

大学無償化を利用する際には、子どもを3人以上同時に扶養していることが条件です。たとえば、第1子が大学への進学を希望しており、第2子と第3子が高校生や中学生の場合、第1子は大学無償化の対象となります。

ただし、大学無償化の対象となるのは「3人以上を同時に扶養している」というのが条件であり、場合によっては第2子・第3子が大学無償化の対象外となるケースがあるため注意が必要です。たとえば、子どもが3人いる家庭で第1子が就職して扶養から外れている場合、第2子と第3子は大学無償化の対象外となります。

しかし第1子が高校もしくは大学卒業後、フリーターや大学院への進学などによって扶養に入っている場合は、第2子も大学無償化の対象となります。

2.3 所得制限はなし

多子世帯に該当すれば、所得制限を受けることなく利用可能です。ただし、住民税非課税世帯と住民税非課税世帯に準ずる世帯によって支援される額が以下のように異なります。

住民税非課税世帯と住民税非課税世帯に準ずる世帯によって支援される額
支援の対象 授業料 給付型奨学金
住民税非課税世帯(第1区分) 全額支援 全額支援
住民税非課税世帯に準ずる世帯 第2区分 全額支援 全額支援の3分の2
第3区分 全額支援 全額支援の3分の1

なお住民税非課税世帯と住民税非課税世帯に準ずる世帯の該当する項目については、家族構成によって異なるため注意が必要です。

2.4 文部科学省の要件を満たした学校が対象

文部科学省の「機関要件の確認事務に関する指針 2024年度版」によると、支援の対象となる学校の種類は以下の通りです。

  • 大学(別科及び専攻科並びに大学院を除く)
  • 短期大学(認定専攻科を含み、別科を除く)
  • 高等専門学校(第4学年及び第5学年に限る。認定専攻科を含む)
  • 専門課程を置く専修学校(あくまで専門課程の生徒が対象)

仮に第1子が大学院に進学した場合、第1子は大学院生のため支援の対象外です。しかし引き続き扶養されていれば、扶養されている子どもの数は3人のため、第2子以降は支援の対象です。

なお具体的な修学支援制度の対象機関リストは、文部科学省のホームページに掲載されています。

3. 入学金も授業料も?大学無償化の支援内容は?

2025年4月より改正される大学無償化は、多子世帯であれば所得制限を受けることなく支援が受けられます。授業料や入学金の減免上限額や、給付型奨学金の給付額は以下の通りです。

【多子世帯の場合の授業料減免額】

多子世帯の場合の授業料減免額
昼間制・夜間制 学校の種類 授業料減免額(年額) 入学金減免額(1回限り支給)
昼間制 大学 国公立 535,800円 282,000円
私立 700,000円 260,000円
短期大学 国公立 390,000円 169,200円
私立 620,000円 250,000円
高等専門学校 国公立 234,600円 84,600円
私立 700,000円 130,000円
専門学校 国公立 166,800円 70,000円
私立 590,000円 160,000円
夜間制 大学 国公立 267,900円 141,000円
私立 360,000円 140,000円
短期大学 国公立 195,000円 84,600円
私立 360,000円 170,000円
高等専門学校 国公立 ※現在開講されていない
私立
専門学校 国公立 83,400円 35,000円
私立 390,000円 140,000円

【多子世帯の場合の給付型奨学金の支給額】
給付型奨学金の場合、全額支給の額は以下の通りです。なお、住民税非課税世帯に準ずる世帯に該当する場合、第2区分の場合は全額支給の3分の2、第3区分の場合は全額支給の3分の1となります。また給付額は昼間制と夜間制で違いはありません。

多子世帯の場合の給付型奨学金の支給額
学校の種類 給付額(年額)
自宅 自宅外
大学 国公立 350,400円 800,400円
私立 459,600円 909,600円
短期大学 国公立 350,400円 800,400円
私立 459,600円 909,600円
高等専門学校 国公立 210,000円 410,400円
私立 320,400円 519,600円
専門学校 国公立 350,400円 800,400円
私立 459,600円 909,600円

4. 大学無償化の手続き方法は?

支援を受ける場合のスケジュールについて、2025年4月からの場合で確認しておきましょう。大学無償化の申し込み方法は、予約採用と在学採用の2種類があります。予約採用とは、大学や専門学校などに進学する前に申し込みをする方法で、在学採用とは進学後に申し込みをする方法です。

大学無償化の申し込み方法について、予約採用と在学採用に分けて紹介します。

【予約採用の場合】
まずは文部科学省や独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)のサイトで制度の内容を確認して、自身が対象になるかを調査しましょう。対象になる場合は、申し込み関連書類を受け取ります。2024年4月より申し込みが可能となっているので、インターネット(奨学金申込専用ホームページ「スカラネット」)で申し込み情報を入力し、必要書類を提出します。本人や父母などのマイナンバーも必要です。

支援の対象になることが決まったら、2024年10月頃に通知が届きます。2025年4月に支援の対象になる学校に入学したら、インターネットで進学届を提出しましょう。授業料・入学金の減免を受けるときは、申し込み方法を進学先に確認して申し込みます。4月か5月に最初の奨学金が振り込まれ、授業料や入学金の減免も行われるでしょう。

申し込み期間は学校によって異なり、予約採用の場合、給付型奨学金は高校に、授業料・入学金の減免は進学先の学校にそれぞれ確認が必要です。

【在学採用の場合】
在学採用の申し込みは毎年春と秋の2回、在学中の大学を通じてJASSOに申し込みます。授業料・入学の減免もこのときに併せて申し込みをしましょう。

在学中の学校で関係書類を受け取り、給付型奨学金はインターネットで授業料等減免は学校に申し込みをします。申し込んでから3ヵ月くらいで選考結果がJASSOから学校を通じて学生本人に通知される流れです。授業料や入学金の減免のタイミングは学校によって異なるため、大学等の窓口で確認する必要があります。以下は、春に申し込んだ場合と秋に申し込んだ場合のスケジュールの例です。

大学無償化の手続き 春に申し込んだ場合と秋に申し込んだ場合のスケジュールの例
春に申し込んだ場合 秋に申し込んだ場合
申し込み 4月~ 9月~
採用決定の通知 7月頃 12月頃
奨学金の振り込み 7月頃 12月頃
授業料・入学金の減免 大学等によって異なる

採用決定後の手続きが未完了だと、支援が一時停止されたり打ち切られたりする可能性があるため注意が必要です。

また成績が著しく不良、あるいは大学から退学などの重たい懲戒処分を受けたような場合、支援金の返還を求められることがあります。継続的に支援を受けるためにはしっかりと学業に取り組むことが大切です。

5. まとめ

大学無償化とは、経済的な理由によって大学・専門学校への進学が制限される人に向けて、授業料や入学料の免除もしくは補助する制度のことです。正式には高等教育の修学支援新制度といい、授業料等減免制度と給付型奨学金の2つで構成されています。

2020年に実施された大学無償化は、2025年4月より多子世帯であれば所得制限なしで支援を受けられるように変更されます。しかし、2025年4月入学者が対象であったり扶養する子どもが3人以上であったりするなど、大学無償化を受ける条件が決まっているため、事前に確認しておくことが大切です。

大学無償化の利用を検討している人は、スムーズに手続きを済ませられるよう早めに情報収集して準備に取りかかりましょう。

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