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生命保険(死亡保険)に相続税はかかる?課税対象となる条件や相続税対策のポイントをご紹介

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掲載日:2025年7月28日

生命保険は、万が一の備えだけでなく、相続税対策としても役立つ金融商品です。死亡保険金は「みなし相続財産」として相続税の対象となる場合がありますが、生命保険の非課税枠や受取人指定といった強みを活かせば、相続税の負担を軽減し、財産をスムーズに引き継げます。この記事では、生命保険と相続税の関係性や、具体的な節税対策について詳しく解説します。

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1. 生命保険(死亡保険)と相続税の関係

生命保険の保険金にかかる税金は、契約者(保険料を支払う人)、被保険者、受取人の関係によって異なります。特に死亡保険金は、被保険者の死亡時に支払われることが多いため、相続税との関連が深く誤解されやすい点です。死亡保険金は、実際の相続財産ではありませんが、相続によって取得した財産とみなされる場合があり、これを「みなし相続財産」と呼びます。

保険金が相続税の課税対象となるかどうかは、契約者・被保険者・受取人の組み合わせによって判断されます。具体的にどのようなケースで相続税がかかるのか、あるいはかからないのかについて詳しく見ていきましょう。

1.1 生命保険(死亡保険)に相続税がかかるケース

生命保険金がみなし相続財産として相続税の課税対象となるのは、主に以下の2つのケースです。

  • 契約者と被保険者が同一で、受取人が法定相続人である場合

生命保険金が相続税の課税対象となる典型的なパターンです。保険料を支払っていた人(契約者)と、保険の対象となる人(被保険者)が同じで、死亡によって保険金を受け取る人(受取人)が、民法で定められた法定相続人(配偶者、子、父母など)である場合です。

例えば、夫(契約者=被保険者)が生命保険料を支払い、妻(受取人)が保険金を受け取る場合には、保険金は被相続人(夫)の元々の財産ではないものの、夫の死亡によって取得する財産とみなされて「みなし相続財産」に該当し、相続税が課税されます。

  • 保険料負担者が被相続人である場合

最終的に重要となるのは「誰が保険料を負担していたか」という点です。保険契約の名義が誰であるかにかかわらず、実質的に被相続人が保険料を支払っていたと判断される場合、保険金は相続税の課税対象となる可能性があります。

例えば、名義上は妻が契約者となっていても、保険料が夫(被保険者)の口座から継続して引き落とされていた場合、実質的な保険料負担者は夫と判断されることになります。この場合、夫の死亡により支払われる保険金は、夫が保険料を負担していたとみなされ、「みなし相続財産」として相続税の対象となることがあります。

このように、生命保険の保険金が相続税の課税対象となるかどうかは、契約者、被保険者、受取人の関係性だけでなく、実質的な保険料負担者が誰であったかという点も大きく影響します。

1.2 相続税がかからないケース

生命保険金が相続税の対象にならない場合は、別の税金が課税されるケースが該当します。具体的には、贈与税や所得税(一時所得)の課税対象となる場合です。

  • 受取人が相続人以外の場合

被保険者が死亡し、その保険金を受け取る人が法定相続人以外である場合、保険金には「贈与税」が課されることがあります。例えば、夫が契約者かつ被保険者として保険料を支払い、相続人ではない孫が保険金の受取人である場合、夫の死亡によって孫が受け取る保険金は、夫から孫への贈与とみなされ、贈与税の対象です。

ただし、契約者や被保険者と受取人の関係によっては、相続税や所得税の対象となる場合もあります。

  • 契約者と受取人が同一で、被保険者が異なる場合

このケースでは、保険金は「一時所得」として所得税と住民税の課税対象となります。例えば、夫が契約者および受取人となり、妻が被保険者となっている場合は、夫が保険料を支払い、妻の死亡時に夫自身が保険金を受け取ることになります。このとき支払われる保険金は、夫が得た偶発的な利益とみなされ、一時所得として課税されます。

2. 非課税枠の仕組みと計算方法

生命保険金が相続税の課税対象となる場合でも、生命保険には相続税を軽減するための「非課税枠」が設けられています。生命保険金の非課税枠は、以下の計算式で求められます。

「非課税枠=500万円×法定相続人の数」

この非課税枠は、受け取った生命保険金のうち、この金額までは相続税がかからないというものです。つまり、非課税枠を超える部分の保険金に対して相続税が課されることになります。

【計算例】
法定相続人:3人(配偶者、子2人)
受け取った生命保険金:2,000万円

  • 非課税枠:500万円×3人=1,500万円
  • 課税対象となる生命保険金:2,000万円(受け取った保険金)−1,500万円(非課税枠)=500万円

上記の計算例では、500万円が他の相続財産と合算され、相続税の計算対象となります。このように、生命保険の非課税枠は、相続税額を抑えるうえで非常に有効な手段です。特に、預貯金や不動産など、他の相続財産が多い場合に、生命保険を活用することで相続税の負担を軽減できる可能性があります。

なお、この非課税枠は、法定相続人全員が受け取る生命保険金の合計に対して適用される点に留意が必要です。例えば、法定相続人が複数いて、それぞれが生命保険金を受け取る場合でも、合計額が非課税枠を超える部分に対して相続税が課されます。

3. 相続税対策で生命保険を選ぶべき理由

生命保険は、万が一の際の経済的な備えとなるだけでなく、効果的な相続税対策としても活用できる金融商品です。ここでは、相続税対策として生命保険を選ぶべき具体的な理由を4つ紹介します。

3.1 非課税枠が適用される

生命保険金には「500万円×法定相続人の数」という独自の非課税枠が設けられています。これは、預貯金や不動産などの一般的な相続財産にはない、生命保険ならではのメリットです。

例えば、預貯金で同額の財産を遺す場合、その全額が相続税の課税対象となりますが、生命保険であれば非課税枠を活用することで、その一部または全額を非課税にできます。これにより、相続税の負担を軽減し、より多くの財産を次世代に引き継げる場合があります。

特に、相続財産が基礎控除額を超える見込みがある場合や、預貯金以外の流動性の低い資産(不動産など)が多い場合に、生命保険の非課税枠は相続税額を抑えるうえで有効な手段となるでしょう。

3.2 受取人の指名が可能

生命保険の大きな特徴の一つは、契約時に保険金を受け取る人(受取人)を指定できる点です。これにより、被保険者が亡くなった際、指定した受取人に確実かつスムーズに保険金を渡せます。

一般的な相続財産の場合、遺言がない限り、相続人全員での遺産分割協議が必要です。遺産分割協議は、相続人同士の意見の相違からトラブルに発展することもあり、実際に財産が分けられるまでに時間がかかるケースも少なくありません。

しかし、生命保険金は、指定された受取人の固有の財産となるため、遺産分割協議の対象外です。これにより、相続発生後、保険金支払いの手続きをするだけで受取人に保険金が支払われます。

このように、受取人を指定できる生命保険は遺言に近い役割を果たし、ご自身の意向を反映させるための有効な手段となります。

3.3 納税資金として活用できる

相続税は、原則として現金一括での納税が義務付けられています。しかし、相続財産の多くが土地や建物など、換金しにくい資産である場合、相続人が相続税を支払うための現金をすぐに用意できない場合もあるでしょう。

このような場合に有効なのが、生命保険です。生命保険金は、被保険者の死亡後、比較的短期間で受取人に支払われます。相続税の納税期限(相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内)までに現金を手元に用意する手段として、生命保険は実用的です。

生命保険金を納税資金として活用することで、納税のために慌てて不動産を売却したり、多額の借り入れをしたりするリスクを回避できます。また、相続税だけでなく葬儀関連費用や当面の生活費など、相続発生後に必要となるさまざまな費用を賄う資金にすることも可能です。

3.4 代償分割が可能

相続財産の中に、公平に分けにくい不動産や、複数の相続人で共有することが難しい事業用資産などがある場合、遺産分割が困難になることがあります。このような場合に活用できるのが「代償分割」です。代償分割とは、特定の相続人が不動産などの現物資産を相続する代わりに、他の相続人に対して、その相続分に相当する金銭(代償金)を支払うことで、公平な遺産分割を行う方法です。

生命保険は、代償分割における金銭を準備する手段として活用できます。例えば、長男が家業の不動産を単独で相続する代わりに、生命保険金を受け取った長男が、その保険金の中から他の兄弟姉妹に代償金を支払うといったケースです。

生命保険を活用することで、不動産を売却する必要がなくなり、また代償金の支払いの原資を準備しやすくなるため、円滑な遺産分割を進められます。これにより、相続人間の公平性を保ち、相続をめぐるトラブルの回避にも役立ちます。

4. まとめ

生命保険(死亡保険)は、ご家族の万が一の経済的な備えとしてだけでなく、相続税対策としても有効な金融商品です。生命保険金には、「500万円 × 法定相続人の数」という独自の非課税枠が設けられており、相続税の負担を軽減できる大きなメリットがあります。また、受取人を指定することで、ご自身の意思を反映した確実な財産承継が可能となり、納税資金の確保や、代償分割による円滑な遺産分割にも役立ちます。

ご自身の状況に合わせた最適な生命保険を選ぶことで、賢く相続税対策を進められるでしょう。東京スター銀行は、相続対策のほか、生命保険の見直しにも対応しています。生命保険について不明な点がありましたら、気軽にお問い合わせください。

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