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長期金利とは?改めておさらいしたい基礎知識

  • #経済
  • #時事

掲載日:2023年4月28日

経済ニュースなどでよく見聞きする「長期金利」という言葉について、意味は何となく分かるけど、言葉にして説明するのは難しいという方も多いでしょう。文字通り、長期間の資金融通に関係する金利を指しますが、それはどこで適用され、経済や生活にどんな影響を与えるのでしょうか?この記事では、長期金利の基本から、変動することによって起きる影響などについて解説します。長期金利は、私たちの日常生活に深く関わっているので、その視点で読み進めると理解が深まりやすいでしょう。

この記事は5分で読めます!

1. 長期金利とは

最初に、そもそも金利とは何かという解説をします。その上で、長期金利と短期金利の違いも解説していきます。

1-1. 【今さら聞けない?!】そもそも金利とは何?

一般的に、お金の貸し借りをした際、借り手は貸し手に利息を支払います。金融機関からお金を借りれば利息を支払う必要があり、逆にお金を預ければ(貸せば)利息がもらえるのは、日常生活で知るところです。その利息の金額を計算する割合(利率)が、金利です。

金利の水準は、お金を貸す側と借りる側の需給関係によって変動します。お金を借りてでも使いたい需要が増えると、金利は上昇します。あるいは、お金の供給が少なくなる(貸したくてもお金が足りない)ことも、金利上昇の要因となります。逆に、お金を借りて使いたい需要が減ったり、お金の供給が多い(貸したくても借りてもらえない)場合は、金利は低下します。

借りる側 貸す側 金利
借りて使いたい(需要増) 貸したいが足りない(供給減) 上昇
借りてまで使いたくない(需要減) 借りてもらえない(供給増) 低下

1-2. 長期金利とは?短期金利との違いも知っておこう

金利には、長期金利と短期金利があります。両者の違いはどこにあるのでしょうか?
長期金利は、資金の貸し借りをする期間が1年を超える場合に適用される金利のことです。経済ニュースで長期金利という場合は、10年物国債(償還期限が10年の国債)の金利、すなわち10年物国債利回りを指します。この10年物国債利回りは、住宅ローンなどその他の長期金利の指標となります。
これに対して、短期金利は1年未満の資金の貸し借りで適用される金利のことです。金融機関同士で資金を融通し合う際に適用される金利が多く、その中で代表的な指標となるのが無担保コールレートです。日本の中央銀行である日本銀行は、この無担保コールレートを調節することにより、金融政策に沿った金利水準に誘導するオペレーションを行っています。つまり短期金利は、金融当局の政策によって決まる、事実上の政策金利なのです。

2. 長期金利の変動は何で決まる?

短期金利は金融当局がコントロールできるわけですが、もう一方の長期金利は経済情勢に影響を受けながら市場で形成されていきます。長期金利の変動要因としては、為替、景気、物価があります。本来は、各要因が複雑に影響しながら長期金利が形成されていくものですが、ここでは単純化した基本法則を解説していきましょう。

2-1. 為替

為替相場の動向は、長期金利に直接的な影響をもたらします。例えば円安傾向の場合、外貨買い・円売りの傾向が強まります。すると、円から外貨へ資金が流れ、円の資金需要に対して供給が減るため、金利が上昇します。ここでは日本円を例に解説しましたが、これは他の通貨でも同様のことがいえます。また、円安は物価上昇も招き、これがさらなる金利上昇を招くことにもなります。

2-2. 景気

景気と長期金利の関係は、分かりやすいです。景気が良くなると個人消費や企業の設備投資などが拡大して資金需要が高まることから、金利は上昇します。反対に、景気が悪くなると資金需要が減り、金利は低下します。

2-3. 物価

物価が上昇すると、相対的にお金の価値は低くなります。そうなると、多くの人や企業はお金をモノに替えるようになり、資金需要が高まります。そのため金利が上昇します。さらに、物価上昇が続くと、中央銀行はその過熱感を抑えるために政策金利を引き上げ、お金の供給を減らそうとします。この金融政策でも、金利が上昇しやすくなります。

3. 長期金利は日常生活にどのように影響する?

前述の長期金利に関する解説はマクロの視点でしたが、次は日常生活の視点で長期金利の変動が及ぼす影響について解説します。

3-1. 金利が上昇している場合

長期金利が上昇すると、住宅ローンや自動車ローンなどの金利(固定金利)も連動して高くなります。こうした長期ローンを組む高額商品は、金利が上がると利息が増えてしまうため、新規購入を控える動きが出てきます。一方、長期金利の上昇により、定期預金の金利が上がる可能性もあります。現在は長らく超低金利時代が続いていますが、仮に定期預金の金利が上がるとなれば、お金を貯蓄に回す人も多くなるでしょう。

3-2. 金利が低下している場合

長期金利が低下すると、住宅ローンや自動車ローンなどの金利も低くなるため、高額商品を新規購入しやすくなります。すでにローンを組んで返済している人の中には、これまでの低金利が購入の決断材料になったという人も多いのではないでしょうか。一方、長期金利が低下すると、現在がそうであるように貯蓄のメリットが薄れます。そのため、株や投資信託などに資金が流れやすくなります。

4. まとめ

当記事では、長期金利の基本や影響について整理してきました。内容をまとめると、以下のようになります。

  • 長期金利とは、1年を超えるお金の貸し借りで発生する金利のこと
  • 短期金利は金融当局の政策によって決まり、長期金利は市場によって決まる
  • 長期金利は為替、景気、物価などの動向によって変動する
  • 長期金利の動向は私たちの日常生活にも影響を及ぼす

特に、日常生活への影響が重要で、住宅や自動車など大きな買い物を検討している人は、長期金利の動向を見て判断材料にするのもよいでしょう。また長期金利の動向は、投資判断にも深く関わるため、その動向にアンテナを張って、どこに資金を振り向けることが有利であるかを考える視点が重要です。

以上

【ライター情報】
蛯沢 路彦

早稲田大学教育学部卒業。出版社勤務などを経て独立後、月刊誌「FX攻略.com」の編集長、その版元の株式会社Wa plus代表取締役を務める。退任後、マネー誌やウェブメディアにおいて、金融・経済の分野を中心に執筆活動を続ける。2020年11月、株式会社イノベクションを創業。

早稲田大学教育学部卒業。出版社勤務などを経て独立後、月刊誌「FX攻略.com」の編集長、その版元の株式会社Wa plus代表取締役を務める。退任後、マネー誌やウェブメディアにおいて、金融・経済の分野を中心に執筆活動を続ける。2020年11月、株式会社イノベクションを創業。

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