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インフレとはどのような状態?インフレが起こる原因・対策を知り資産を守ろう

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掲載日:2022年8月15日
最終更新日:2023年12月18日

2023年4月現在、原材料や原油の価格高騰、円安による輸入物価の上昇を背景にした値上げラッシュが止まらず、家計のやりくりに頭を悩ませている方は多いのではないでしょうか。食品をはじめ、日用品や光熱費など幅広い分野での値上げは、まだ収束の気配が見えていません。

2023年4月現在のようにいろいろなモノの価格が上がることを「インフレ」と呼びます。インフレが進行すると経済的に苦しくなるというイメージはありませんか?

日本は長らくデフレが続いており、日本銀行はインフレに誘導することによりデフレ脱却を目指してきた、という経緯があります。

「それならインフレは歓迎すべきことでは?」と考えられそうですが、実際のところはどうなのでしょうか。この点も含めて2023年現在に起きているインフレについて、その原因や考えられる影響、さらに家計のインフレ対策について解説します。

この記事は12分で読めます!

1. インフレ・デフレとは?

最初に、インフレとその反対語であるデフレについて、それぞれの基本的な知識を整理しておきましょう。

1-1. インフレとは

「インフレ」は、インフレーション(inflation)の略語です。お金の相対的な価値が下がり、一方でモノの価値が上がる状態のことです。インフレになると景気が上向くことで給料が高くなり、消費が活発になり、旺盛な需要が供給を上回ることによって物価が上昇するのが一般的な形です。これは良いインフレの形であり、その原因は景気の拡大なので健全なインフレといえます。その一方で、上記の通りにはいかないインフレもあります。こちらについて詳しくは後述しますが、場合によってインフレは経済の状況が良くなる可能性を秘めた状態である、といえます。

1-2. デフレとは

「デフレ」は、デフレーション(deflation)の略語です。お金の相対的な価値が上がり、一方でモノの価値が下がる状態のことを指します。景気が減速、企業の業績は悪化し、給料や雇用が減るため消費者の購買力が低下します。そのためモノが売れず不景気になります。デフレで物価が下落すると給料も下がるため、さらに購買力が低下して物価が下落するという負の循環といえるような状況をデフレ・スパイラルといいます。

インフレ・デフレの比較
インフレ デフレ
お金の相対的な価値 下がる 上がる
モノの相対的な価値 上がる 下がる
需給関係 需要>供給 需要<供給
景気 拡大 縮小

2. インフレには良いインフレと悪いインフレがある

値上げラッシュに直面している今、インフレに対して悪いイメージを持っている人も多いでしょう。しかし、一口にインフレといっても、良いインフレと悪いインフレがあります。ここでは両者の違いについてまとめます。

2-1. 良いインフレとは?

冒頭で紹介した通り、良いインフレとは物価上昇と経済活性化の好循環が生まれる状態のことです。景気が良くなると消費者の購買意欲が高まり、需要が増大します。それによりモノの価格が上昇し、企業収益が増加。賃金が上昇することで、さらに経済が活性化するというサイクルが回ります。このような需要拡大を要因としたインフレは「ディマンドプルインフレ」と呼ばれ、景気の拡大期に見られます。

良いインフレのポイントは、物価上昇を上回る賃金上昇があることです。日本では1990年代半ば頃までは、このような物価と賃金がともに上昇する関係が見られました。

2-2. 悪いインフレとは?

一方、悪いインフレとは物価上昇が経済の停滞を招く状態のことです。原材料価格の高騰により生産コストが上昇し、それがモノの価格に転嫁されて物価が上昇します。この場合、需要が増えているわけではなく、むしろ生産者が減少することにもなり、供給減となります。消費が増大することはなく、企業収益や賃金は上がらないので、景気が良くなることはありません。このようなコストの上昇を要因としたインフレを「コストプッシュインフレ」と呼びます。悪いインフレのポイントは、物価が上昇しても賃金の上昇が追い付かないことです。

3. インフレが進み過ぎるとハイパーインフレに

物価上昇が過度に進み過ぎた場合、二重指数関数的な物価上昇を招きます。この急激にインフレが加速していく状態は、ハイパーインフレと呼ばれます。米国の経済学者であるフィリップ・D・ケーガンは、インフレ率が毎月50%を超えることを、国際会計基準(IFRS)では3年間の累積インフレ率が100%を上回る状況を、ハイパーインフレと定義しています。

象徴的な例として挙げられるのは、ジンバブエ共和国において2000年代に発生したハイパーインフレです。インフレ率2億%(年率)を超えるほどの物価上昇が起こりました。モノの値段が急激に上がる一方で貨幣価値は極端に下落し、人々は大量の紙幣で買い物をすることになり、その果てには1,000兆ジンバブエドル紙幣が発行されるまでの異常事態となりました。

この他にも、第一次世界大戦後のドイツやオーストリア、第二次大戦後のハンガリーなど、歴史的に見て多くの例があります。

4. インフレが起きる原因

前述の通り、お金の相対的な価値が下がり、モノの価値が高くなるのがインフレです。一般的な形として景気の拡大を原因に挙げましたが、それも含めて以下のような原因があります。

インフレの原因と具体的な効果
原因 具体的な効果
1.減税 減税を通じて、個人や法人の経済活動を刺激
2.公共事業の増加 雇用の拡大、所得の増加
3.社会保障の充実 国や地方自治体の財政支出を拡大
4.所得の分配 社会全体の実質所得や雇用水準が向上
5.金融政策(日銀による金利引き下げや債券発行) 物価水準の継続的な上昇をもたらす
6.供給不足(≒需要過多) 消費活動が活発化

インフレにはさまざまな要因が複雑にからみます。要因別にインフレの良い傾向、悪い傾向を区別することはできませんが、一般的にこれらがインフレの起きるきっかけとなることが多いです。アベノミクスのように、政策的な思惑から金融緩和や財政出動を行い、インフレへ誘導することもあります。

5. 現在起きているインフレ!この原因は?

先ほどインフレの要因として考えられる6つの項目を挙げました。ここで重要なポイントは、直近の2023年現在に起きているインフレはこのうちどの要因によるものなのかということです。

まず、主な原因について考えていきましょう。2023年に発生しているインフレの原因は、供給不足(需要過多)が主であると考えられます。その根拠は、以下の2点です。

(1)コロナ禍

2020年から瞬く間に世界中に広がったコロナ禍は、世界経済にさまざまな影響をもたらしました。その中でもサプライチェーン(調達、製造、販売、消費の流れ)への影響は深刻です。感染拡大防止を目的としたロックダウンによる生産活動の停止や、海上物流の停滞などが重なり、世界全体の生産力が低下しました。

その一方で、需要が極端に減ることはなく、その需要に見合った供給が追いついていないことから、モノの価値が上がり、インフレが進行している、という流れです。

また、世界的な半導体不足もコロナ禍による影響が大きく、半導体価格の高騰がさまざまな電気製品の価格を押し上げていることもインフレを加速させる原因となっています。

(2)原油価格の高騰

昨今の原油価格の高騰も、コロナ禍が深く関わっています。コロナ禍によって経済活動が停滞してしまい、企業の業績が悪化したことから投資が縮小してしまいました。そのため、原油の生産力が低下し、回復した原油の需要に追いついていないことにより原油価格が高騰しているのです。原油はさまざまなモノの生産に必要な資源だけに、原油価格が高騰するとあらゆるモノの価格に影響を与え、総合的な物価上昇につながります。

6. 現在の日本のインフレ状況は?

2023年4月現在、あらゆる分野での値上げのニュースを見聞きしない日はないほど、インフレが常態化しています。インフレの状況は、消費者物価指数から見ることができます。2020年を基準(100)とした消費者物価指数は、2022年に入ると右肩上がりに推移し、2022年平均の総合指数は102.3と前年比2.5%の上昇となりました。

総合指数の前年同月比の推移を見ると、2022年は上昇を続けましたが、2023年2月分で下落に転じる流れとなっています。とはいえ、依然として3.3%と高い水準を保っています。今後、この数値が切り下がっていくかどうかに注目です。

一方、生鮮食品およびエネルギーを除く総合指数(コアコアCPI)の前年同月比の推移を見ると、まだ右肩上がりの推移が続いています。こちらは天候や市況に左右されやすい食品とエネルギーを除いており、よりインフレ動向を把握しやすい指標として注目されます。

消費者物価指数でインフレ動向を見るためには、総合指数とともに、コアコアCPIの推移もチェックすると良いでしょう。

7. 現在の世界のインフレ状況は?

インフレは日本に限ったことではなく、世界中で進行しています。むしろ他国の方が深刻で、消費者物価指数(前年同月比)が日本の水準を大きく上回る国も多く見られ、ドイツ、イギリス、イタリアでは10%を上回る数値があるほどです。

とはいえ、その推移がピークアウトしている国もあります。米国では2022年6月がピーク(9.1%)となり、同年12月には6.5%まで切り下げています。ただし、日本よりもまだまだ水準が高く、低下スピードが早いとはいえない推移を見せる国が多いです。2023年4月現在は、インフレのピークアウトの兆しが見え始めた段階といえそうです。

8. これからのインフレに私たちはどう備える?対策2つ

直近のインフレの理由や構造をご紹介しました。それでは、このインフレからどうやって家計を守るべきなのでしょうか。今できること、対策を以下にまとめます。

8-1. 保有資産を分散する

インフレでまず対策するべきリスクは、「お金(貨幣)価値の低下」です。現在保有している現金資産の価値が相対的に下がってしまうため、同じ額面のお金であっても買えるものが少なくなってしまいます。

お金の価値低下に対して取り組むことができるのが、お金だけでなく株式や投資信託などの運用商品、不動産への投資、商品(コモディティ)への投資なども組み込む資産の分散が一つの手段です。リスクが怖いという理由で投資を避ける方もいらっしゃいますが、日本円だけで資産を保有するのは、「ゼロ金利の日本円に集中投資」していることであり、資金効率も非常に低くなってしまいます。

さらに、インフレ局面では現物資産の価値が高くなります。金(ゴールド)はその代表格で、資産の一部を金などの現物で保有することも、有効なインフレ対策になります。

重要なのはインフレになったら何の価値が下がり、何の価値が高くなるのかを知り、常にアンテナを張っておいて適切な行動をとることです。

8-2. 過度のインフレにはリスクも

2020年以来のインフレが、果てしなく進行していくかどうかは分かりません。そのため、現在保有している資産をすべてインフレ対策用にシフトしてしまうこともまたリスクです。資産の一部をインフレ対策に回して、インフレによる影響を緩和し、長期的な資産の目減りを防ぐ考え方が有効だと言えます。この機会に適切な資産配分を考え、それに合わせて変更するのが有意義でしょう。

9. 資産運用を始めるなら、東京スター銀行がおすすめ!

東京スター銀行では、資産形成サポートを行っています。円定期預金、外貨預金、つみたて投資枠やiDeCoといった積立投資などを提供しており、お客さまのタイプや目的に適した金融商品をご提案します。銀行で資産運用するメリットは、相談しながらさまざまな金融商品への分散投資ができることです。また、お金を増やす資産運用以外にも、住宅ローンなどライフプランの相談もできるのが特徴です。オンラインでの相談が可能なので、ぜひご利用ください。

(関連記事:東京スター銀行で資産運用を始めよう!お得なプログラムやおすすめ情報等をご紹介)

10. 東京スター銀行おすすめの金融商品

ここでは東京スター銀行が提供する主な金融商品を紹介します。昨今の円安時代に注目されている外貨預金と、投資家から人気を集める投資信託を取りあげます。

スターワン外貨定期預金
1ヵ月から始められるのが特徴の、外貨定期預金です。短期間で確実な利息を狙いたい方におすすめです。5種類の通貨(米ドル、ユーロ、オーストラリアドル、ニュージーランドドル、南アフリカランド)と、預入期間(1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、1年)から選べます。中途解約はできないものの、確実な利息を狙えます。
スタードリーム外貨定期<仕組み預金>
満期日繰上特約付外貨定期預金(仕組み預金)です。特約(当行の判断により1年ごとに当初満期日が繰り上がる可能性がある)が付いているかわりに、スターワン外貨定期預金よりも利率が高く設定されています。預入通貨は米ドルまたはオーストラリアドルで、5年タイプ、10年タイプがあり、長期運用で利息を得たい場合におすすめです。
eMAXIS Slim(イーマクシス スリム)

分散投資を手間なく実現したい、自分で選んで個別の資産に投資をしたい、どちらの選択も可能な、初心者にもおすすめの投資信託です。

購入時手数料は無料で、さらに業界最低水準の運用コストを目指しています。eMAXIS Slimには投資対象の異なる13種類があり、投資家は好みに合ったものを選ぶことができます。つみたて投資枠適格の種類もあり、長期的な資産形成が可能な金融商品です。

11. マインド転換でインフレのリスクに備えよう

日本人は、諸外国と比較して現金資産に対する信頼度が根強いと言われています。さらに「失われた30年」と呼ばれる長期デフレの影響もあって、元本が保証されない投資に回すよりも、預貯金で持っているほうが価値を保全できると考える人が多いのかもしれません。

しかし、コロナ禍からの経済再開を通じて、世界各国ではインフレの傾向が顕著になっています。米国では過度のインフレ進行を抑えるために利上げが繰り返されており、こうした影響は日本にも確実に波及します。固定化されてしまったマインドを転換し、現金だけでは資産を守ることができないという考えを持つことが大切でしょう。

「現金で貯蓄するのが安全」「資産運用はなんだか難しそう」「投資は損をするイメージが強い」など、現金以外の資産や投資商品への一歩が踏み出せない方もいるかと思います。そんな方は、インフレ対策のひとつとして、まずは少額から、自分に合うものを購入してみてはいかがでしょうか。

金融商品にはさまざまなバリエーションがあり、それぞれ取引の方法やリスク度合いなどが異なります。選択肢は多様なため、現金以外の資産を保有するにあたって、きっと「これなら始めてみてもいいかも」と思えるものがあるはずです。

ただし、金融商品は多様なため、購入前には正しい知識が必要になります。一人で勉強をするのは少しハードルが高い、という方もいるかと思います。そんなときは、お近くの銀行に相談してみてはいかがでしょうか。お金のプロが最適な情報を提示してくれるので、自分だけで抱え込まずに対応することが可能です。東京スター銀行では、店舗での相談(要予約制)だけでなくオンラインでの相談も受け付けています。気になった方はぜひ相談の予約をしてみてはいかがでしょうか。

【ライター情報】
蛯沢 路彦

早稲田大学教育学部卒業。出版社勤務などを経て独立後、月刊誌「FX攻略.com」の編集長、その版元の株式会社Wa plus代表取締役を務める。退任後、マネー誌やウェブメディアにおいて、金融・経済の分野を中心に執筆活動を続ける。2020年11月、株式会社イノベクションを創業。

早稲田大学教育学部卒業。出版社勤務などを経て独立後、月刊誌「FX攻略.com」の編集長、その版元の株式会社Wa plus代表取締役を務める。退任後、マネー誌やウェブメディアにおいて、金融・経済の分野を中心に執筆活動を続ける。2020年11月、株式会社イノベクションを創業。

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